210121_中華人民共和国海警法(日本語試訳)

この日本語試訳は中国語文献理解の補助とするために無償で公開しているものです。厳密な解釈・理解は、必ず中国語原文を確認願います。

中華人民共和国海警法
(2021年1月22日第13回全国人民代表大会常務委員会第25回会議で採択)

目次
第一章 総則
第二章 機構と職責
第三章 海上安全防衛
第四章 海上行政と法律執行
第五章 海上犯罪捜査
第六章 警察の装備と武器使用
第七章 保障と協力
第八章 国際協力
第九章 監督
第十章 法律責任
第十一章 付則

第一章 総則

第一条 海警機構の職責履行を規範化及び保障し、国家主権、安全と海洋権益を維持し、公民、法人及びその他の組織の合法な権益を保護するために、この法律を制定する。

第二条 人民武装警察部隊の海上警察部隊は、海警機構として、海上権利保護と法律執行の職責を統一的に遂行する。
海警機構は中国海警局及びその海区分局と直属局、省級海警局、市級海警局、海警派出所を含む。

第三条 海警機構は、中華人民共和国の管轄下の海域(以下、我が国の管轄海域と呼ぶ)及びその上空で展開する海上権利保護と法律執行活動を行う場合、この法律が適用される。

第四条 海上権利保護と法律執行業務は中国共産党の指導を堅持し、国家安全保障の全体的概念を貫徹し、法律に従って管理し、総合的な管理を行い、標準的・効率的で、公正と文明の原則に従う。

第五条 海上権利保護と法律執行業務の基本任務は、海上の安全防衛を展開し、海上の治安と秩序を維持し、海上の密輸、密航に打撃を与え、職責の範囲内で海洋資源の開発と利用、海洋生態環境の保護、海洋漁業生産作業等の活動を監督及び検査し、海上での違法及び犯罪行為の予防、制止、処罰を行う。

第六条 海警機構及びその職員は法律に従って職務を執行する上で法律によって保護され、いかなる組織及び個人も不法に干渉、拒否、妨害してはならない。

第七条 海警機構の職員は憲法と法律を遵守し、名誉を重んじ、職務に忠実であり、規律を厳守し、法律を厳格に執行し、清廉潔白でなければならない。

第八条 国は陸海統一調整、分業協力、科学的かつ効率的な海上権利保護と法律執行協力メカニズムを確立する。国務院の関連部門、沿海地方の人民政府、関連する軍事部門と海警機構は相互の協力を強化し、海上の権利保護と法律執行業務を十分に行う。

第九条 海上権利保護と法律執行活動において顕著な貢献をした組織と個人に対し、関連する法律、法規に従って表彰と奨励を与える。

第二章 機構と職責

第十条 国は行政区画と任務区域に従って沿海地域に、中国海警局海区分局と直属局、省級海警局、市級海警局と海警派出所を設置し、それぞれ管轄区域における海上権利保護と法律執行業務を担当する。中国海警局は国家の関連規定に従い、所属する海警機構を指揮し、海上権利保護と法律執行業務を展開する。

第十一条 海警機構の管轄区域は、行政区画の制限を受けずに、海上権利保護と法律執行業務の必要に応じて合理的に規定され、調整されるべきである。
海警機構の管轄区域の区画と調整は、速やかに社会に公表し、関連機関に通知しなければならない。

第十二条 海警機構は法律に従って以下の職責を遂行する。
(一)我が国の管轄海域で巡航、警戒を行い、主要な島礁を守り、海上境界線を管理保護し、国家の主権、安全と海洋権益を危険にさらす行為を防止、制止、排除
(二)海上の重要な目標と主要な活動の安全を防衛し、主要な島礁、排他的経済水域、大陸棚の人工島、施設、構造物の安全を保護するために必要な措置。
(三)海上治安管理を実施し、海上の治安管理及び出入国管理の違反行為を調査・処罰し、海上テロ活動を防止及び処分を行い、海上の治安秩序を維持。
(四)海上に密輸の疑いのある輸送車両或いは貨物、物品、人員の検査を実施し、海上での密輸違法行為を調査・処罰。
(五)職責の範囲内で、海洋利用、島の保護及び非居住者の島開発と利用、海洋鉱物資源の探査と開発、海底電気(光)ケーブルとパイプラインの敷設と保護、海洋調査と測定、海洋基礎測量、外国との海洋科学研究等の活動を監督し、検査し、違法行為を調査し・処罰。
(六)職責範囲内で海洋工学建設プロジェクト、海洋汚染被害に対する海洋投棄廃棄物、自然保護地海岸線の海側への保護と利用等の活動に対する監督検査を行い、違法行為の調査と処罰、規定の権限に基づく海洋環境汚染事故の緊急処理と及び調査処理。
(七)機動漁船の底引き網禁漁地域の外側の海域と特定の漁業資源漁場の漁業生産作業、海洋野生生物の保護等の活動の監督と検査を行い、違法行為を調査・処罰し、法律に従い海上漁業生産安全事故と漁業生産紛争の調査・処理に参加。
(八)海上犯罪活動の防止、制止と調査を。
(九)関連する国家職責の分担に従って、海上での緊急事態に対処。
(十)法律、法規、我が国が締結し、参加している国際条約に従い、我が国が管轄する海域以外の地域で関連する法律執行任務。
(十一)法律、法規に定めるその他の職責。
海警機構は公安、天然資源、生態環境、運輸、漁業及び漁業行政、税関等の管轄部門との職責の分担は、国家の関連規定に従って執行する。

第十三条 海警機構は海上の自然災害、事故災害に関する緊急救助要請を受けた場合は、速やかに関係当局に通知し、緊急救援及び救助を積極的に行う。

第十四条 中央国家機関は、国の関連規定に従い、海上権利保護と法律執行業務に関する業務指導を行う。

第十五条 中国海警局及び海区分局は国の関連規定に従い、沿海地方人民政府の海上法律執行隊による海域の使用、海島の保護と開発、海洋生態環境保護、海洋漁業管理等の関連する法律執行業務を協調的に指導する。
海上権利保護と法律執行業務の必要に応じて、中国海警局と海区支局は沿海地方人民政府の海上の法律執行隊の船舶、人員を統一的に調整し、海上の主要な権利保護と法律執行活動に参与することができる。

第三章 海上安全防衛

第十六条 海上の安全と秩序を維持するために、海警機構は法律に従い、わが国の管轄海域に航行、停泊、業務を行う外国船舶を識別・検証し、船舶の基本情報と航行、業務の基本状況を明らかにする権利を有する。法律違反の疑いがある外国船舶に対して、海警機構は追跡・監視等の措置を講じる権利を有する。

第十七条 我が国の領海及びその内側の海域に不法に侵入した外国船舶に対し、海警機構は速やかに退去を命じるか、拘禁、強制退去、強制曳航等の措置を講じる権利が有する。

第十八条 海警機構は海上防衛任務を実行し、我が国の管轄海域で航行、停泊、業務を行う船舶を法律に従って搭乗、検査することができる。
海警機構が搭乗、船舶を検査する場合、被検査船舶の停止を求める明確な指示を行わなければならない。被検査船舶は指示に従って停船して検査を受け、必要な便宜を提供する。検査への協力を拒否した場合、海警機構は強制的に検査することができる。現場から逃避した場合、海警機構は迎撃、追跡するために必要な措置を講じる権利を有する。
海警機構は船舶を検査し、法律に従って船舶と生産業務許可に関する証明書、資料及び人物の身元情報を確認し、船舶及びその搭載貨物、物品を検査し、関連する違法事実を調査し、証拠を得る権利を有する。
外国の船舶の搭乗、検査、迎撃、追跡は、わが国が締結し、参加している国際条約の関連規定を遵守する。

第十九条 海警機構は、海上緊急事件の緊急の必要性に対処するために、以下の措置を講じることができる。
(一)船舶に航行、業務の停止を命じる。
(二)船舶に対し、航路の変更或いは指定された場所への航行を命じる。
(三)船舶上の人員に下船するよう命じるか、乗船、下船することを制限或いは禁止する。
(四)船舶に貨物の荷降ろしを命じるか、船舶の貨物の荷降ろしを制限或いは禁止する。
(五)法律、法規に定めるその他の措置。

第二十条 我が国の管轄当局の承認なしに、外国組織と個人が我が国の管轄海域と島礁に建築物、構築物を建設し、及び各種の固定或いは浮動装置を設置した場合、海警機構は上記の違法行為を停止するか、或いは期限内に解体するよう命じる権利を有する。違法行為の停止を拒否した場合、或いは期限内に解体を行わない場合、海警機構は停止或いは強制解体を行う権利を有する。

第二十一条 外国の軍用船舶及び非商業目的に使用される外国政府船舶が、我が国の管轄海域で我が国の法律、法規に違反する場合、海警機構は必要な警戒と管制措置を取って制止し、速やかに関連海域から離れるよう命じる権利を有する。立ち退きを拒否し、深刻な危害や脅威を引き起こす者に対して、海警機構は強制立ち退き、強制曳航等の措置を講じる権利を有する。

第二十二条 国家主権、主権権利及び管轄権が海上で外国組織や個人によって不法に侵害されている場合、あるいは違法な侵害の差し迫った危険に直面する場合、海警機構はこの法律及びその他の関連法律、法規に従い、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講じ、侵害を制止し、危険を排除する権利を有する。

第四章 海上行政と法律執行

第二十三条 海警機構は、海上保安、税関、海洋資源の開発と利用、海洋生態環境保護、海洋漁業管理等の法律、法規、規則に違反する組織と個人に対し、法律に従って人身の自由の制限を含む行政処罰、行政強制又は法律、法規によって規定されたその他の措置を講じる。
海警機構は海洋資源の開発と利用、海洋生態環境保護、海洋漁業管理等の法律、法規の規定に従い、海上生産業務現場の監督と検査を行う。
海警機構は海上の違法行為を調査する必要がある場合、関連組織や個人から証拠を収集し、調査する権利を有する。関連組織や個人は、事実どおりに証拠を提供しなければならない。
海警機構は海上の治安秩序を維持するために、犯罪の疑いのある者を現場で取り調べ、検査或いは取り調べを続ける場合、「中華人民共和国人民警察法」の規定に従って執行する。

第二十四条 海警機構は行政法の執行を展開するために、関連する船舶に搭乗、検査、迎撃、追跡する必要がある場合、この法律第十八条の規定に従って執行する。

第二十五条 次のいずれかの状況において、省級海警局以上の海警機構は我が国の管轄海域に一時的な警戒区域を区切って、船舶、人員の通行・停留を制限或いは禁止することができる。
(一)海上防衛任務を遂行するために必要がある場合
(二)海上での違法と犯罪行為を攻撃する必要がある場合
(三)海上での緊急事態に対処する必要がある場合
(四)海洋資源及び生態環境を保護する必要がある場合
(五)海上の一時的な警戒区域を区切る必要があるその他の状況。
海上の一時的な警戒区域を区切る際には、警戒区域の区域範囲、警戒期限、管理措置等の事項を明確にし、公告しなければならない。そのうち、海上交通の安全に影響を与える可能性がある場合、事前に海事管理機構の意見を求め、関連する規定に従って海事管理機構に航行通知、航行警告の発行を申請しなければならない。軍事用海域に影響が及ぶ場合、或いは海上軍事施設の安全と使用に影響を与える可能性がある場合、法律に従って関連する軍隊部門の同意を得る必要がある。
船舶、人員の通行、停留を制限或いは禁止し続ける必要がない場合、海警機構は速やかに警戒を解除し、公告しなければならない。

第二十六条 違法の疑いで調査・処理中の船舶に対して、海警機構は航行、業務を停止させ、指定された場所に停泊或いは出港を禁止するよう命じることができる。必要に応じて、海警機構は調査のために、指定された場所に容疑船舶を護送することができる。

第二十七条 国際組織、外国組織及び個人の船舶が、我が国の管轄当局による承認を得て、我が国の管轄海域で漁業生産業務及びその他の自然資源の探査と開発、海洋科学研究、海底電気(光)ケーブル及びパイプライン敷設等の活動に従事する場合、海警機構は法律に従って監督管理を行わなければならず、法律執行官を派遣して船での監督管理をすることができる。

第二十八条 我が国の陸地領土、河川・湖沼或いは領海における安全、税関、財政、衛生或いは入出国管理に関する法律、法規の違反を防止、制止、処罰するために、海警機構は隣接する地域で管制権を行使し、法律に従って行政強制措置又は法律、法規に規定されたその他の措置を実施する権利を有する。

第二十九条 違法の事実が決定的であり、以下のいずれかの状況において、海警機構の法律執行官はその場で処罰を決定することができる。
(一)個人に五百元以下の罰金或いは警告を課し、組織に五千元以下の罰金或いは警告を課す場合。
(二)罰金の処罰決定が海上のその場でない場所で行われ、その後の処罰は難しい場合。
その場で下された処罰の決定は、所属する海警機構に速やかに備案しなければならない。

第三十条 その場での処罰は適用されないが、事実が明らかであり、当事者が自発的に過ちを認め、違法な事実と法律の適用に異議がない海上行政事件については、海警機構は当事者の書面による同意を得た後、証拠の取り方法を簡素化し、審査・承認等の措置によって迅速に処理することができる。
迅速な処理条件を満たす海上行政事件の場合、当事者が自らの書き込み資料、或いは尋問記録で違法事実を認め、過ちと処罰を認め、さらに視聴覚資料、電子データ、検査記録等の重要な証拠が相互に証明できる場合、海警機構は他の調査及び証拠収集業務を行う必要がない。
取調過程を記録するために法律執行儀等の設備を使用すると、書面による取調記録に置き換えることができる。必要に応じて、視聴覚資料の主要な内容と対応する期間の文字説明を作成する必要がある。
迅速に処理される海上行政事件に対して、海警機構は、当事者の出廷後四十八時間以内に処理の決定を下さなければならない。

第三十一条 海上行政事件は、以下のいずれかの場合においては、迅速な処理は適用されない。
(一)公聴会の手続を法律に従って適用される場合
(二)十日以上の行政拘留処罰が科せられる可能性がある場合
(三)重大な社会的影響を与える場合
(四)犯罪の疑いがある場合
(五)その他迅速な処理に適さない場合

第三十二条 海警機構が行政強制措置を実施する前に、法律執行官は当該組織の責任者に報告し、承認を得なければならない。状況が緊迫しており、海上のその場で行政強制措置を講じる必要がある場合は、二十四時間以内に当該組織の責任者に報告し、着岸後速やかに承認手続を補足しなければならない。不可抗力により二十四時間以内に当該組織の責任者に報告できない場合は、不可抗力の影響が解消された後二十四時間以内に当該組織の責任者に報告しなければならない。海警機構の責任者は、行政強制措置を講じるべきでないと判断した場合は、速やかに解除しなければならない。

第三十三条 当事者が期限内に処罰の決定を履行しなかった場合、処罰の決定を下した海警機構は法律に従って以下の措置を講じることができる。
(一)期日までに罰金を支払わない場合、罰金の3%を加算して罰金を毎日課す。
(二)差押、押収された財産を法律に従って競売、売却する、或いは凍結された預金、送金より罰金を控除する。
(三)法律に従い、その他の行政強制執行方式を採用する。
本法律及びその他の法律に、海警機構が行政強制執行を実施することを規定していない場合、海警機構は強制執行のために人民法院に申請しなければならない。

第三十四条 全ての階級の海警機構は、海上行政事件の管轄分業に関して、中国海警局によって規定される。
海警機構はその他の機関と海上行政事件の管轄に争議がある場合、海警機構とその他の機関が事件の調査及び処理に資する原則に従って協議を行う。

第三十五条 海警機構が海上行政事件を処理する際に、当事者が海上で故意に証拠を破壊するために、物品を海に投げ込む行為を犯したという証拠があり、海警機構による証拠の提示が困難な場合、他の証拠と組み合わせて、関連する違法な事実が確立されていると推定される。但し、当事者が覆すに足る十分な証拠を有する場合を除く。

第三十六条 海警機構は巡航、警戒、迎撃、追跡等の海上法律執行業務を行い、専用標識が表示された法律執行船舶、航空機を使用する場合、それで身分を表明することとなる。
海警機構は行政法律執行の調査或いは検査を行う場合、法律執行官は二人より少なくてはならず、身分を示す法律執行機構の書類を自主的に提示しなければならない。当事者又はその他の関係者は、法律執行官に法律執行書類の提示を求める権利を有する。

第三十七条 海警機構は海上行政法律執行の手続が、この法律に規定されていない場合、「中華人民共和国行政処罰法」、「中華人民共和国行政強制法」、「中華人民共和国治安管理処罰法」等の関連法律の規定が適用される。

第五章 海上犯罪捜査

第三十八条 海警機構は海上で発生した刑事事件を処理し、「中華人民共和国刑事訴訟法」及びこの法律の関連規定に従い捜査権を行使し、捜査措置と刑事強制措置を講じる。

第三十九条 海警機構は、事件が成立した後、国家保安犯罪、テロ活動犯罪、暴力団の性質の組織犯罪、重大な麻薬犯罪、或いは社会を深刻な危険にさらすその他の犯罪事件について、「中華人民共和国刑事訴訟法」及び関連規定に従い、厳格な承認手続を経て、技術捜査措置を講じ、規定に従って関係機関に引き渡して執行することができる。指名手配或いは承認し、逃亡中の容疑者、被告人を逮捕することを決定し、承認を得て、追跡に必要な技術捜査措置を講じることができる。

第四十条 逮捕されるべき容疑者が逃亡中である場合、海警機構は規定に従って指名手配書を発行し、事件を追及するための効果的な措置を講じることができる。
海警機構が容疑者に指名手配書を発令した場合、公安機関に捜索支援を要請することができる。

第四十一条 海警機構は海上刑事事件を扱う際に搭乗、検査、迎撃、関連船舶を追跡する必要がある場合、この法律の第十八条の規定に従い執行する。

第四十二条 海警機構、人民検察院、人民裁判所は、法律に従い海上刑事事件の容疑者、被告が保釈を受けることを決定した場合、保釈を受ける者が居住する海警機構によって執行される。保釈を受ける者の居住地に海警局が設置されていない場合、現地公安機関は執行に協力しなければならない。

第四十三条 海警機構、人民検察院、人民裁判所が法律に従い、海上刑事事件の容疑者、被告に対して居住監視を決定した場合、海警機構は居住監視される者の住所で執行される。居住監視される者が、事件を担当する海警局が所在する市、県に固定住居がない場合は、指定された住居で執行することができる。国家安全保障に対する犯罪、テロ活動犯罪の疑いがある場合、住居での執行は調査を妨害する可能性がある場合は、より高いレベルの海警局の承認を得て、指定された住居で実行することができる。但し、拘置所、特別な事件の取扱場所で執行してはならない。

第四十四条 海警派出所は、管轄区域内で発生した海上刑事事件の捜査する責任がある。
市級海警局以上の海警機構は管轄区域内の重大な国家安全保障に対する犯罪、テロ活動犯罪、外国関連犯罪、経済犯罪、集団犯罪事件及びその他の重大犯罪事件を調査する。
上級の海警機構が必要と考える場合、下級の海警機構の管轄範囲内の海上刑事事件を捜査することができる。下級の海警機構は、事件が重大であると考える海上刑事事件が、上級海警機構が捜査する必要があり、上級海警機構の管轄に報告することができる。

第四十五条 海警機構が海上刑事事件を処理する場合、逮捕或いは起訴移送を承認する必要がある場合、所在地の対応する地方人民検察院に請求或いは移送しなければならない。

第六章 警察の装備と武器使用

第四十六条 次のいずれかの状況において、海警機構の職員は警察の装備、或いは現場のその他の装備、工具を使用することができる。
(一)法律に従って船舶に搭乗、検査、迎撃、追跡する場合、船舶に航行を停止させる必要がある場合。
(二)法律に従って船舶を強制的に退去、強制的に曳航する必要がある場合。
(三)法律に従って職務を遂行する過程で阻害、妨害に遭遇した場合。
(四)違法及び犯罪行為をその場で停止する必要があるその他の状況。

第四十七条 以下のいずれかの状況において、警告に効果がない場合、海警機構の職員は、手持ちの武器を使用することができる。
(一)容疑者が船舶に搭乗しているという明白な証拠がある場合、或いは武器、弾薬、国家機密情報、麻薬等の物品を不法に輸送し、船舶の停止命令に従わない場合。
(二)外国船舶がわが国の管轄海域に入って、不法に生産作業活動を行い、船舶停止命令に従わない場合、或いはその他の方法で搭乗、検査を拒否した場合、違法行為を制止するには他の手段を講じるだけでは不十分な場合。

第四十八条 次のいずれかの状況において、海警機構の職員は手持ちの武器に加えて、船上或いは空中の武器を使用することができる。
(一)海上での反テロ任務を遂行する場合。
(二)海上での深刻な暴力事件を処理する場合。
(三)法律執行する船舶、航空機が武器或いはその他の危険な方法で攻撃された場合。

第四十九条 海警機構の職員は法律に従って武器を使用し、警告或いは警告に間に合わない場合、より深刻な危険をもたらす可能性がある場合は、直接武器を使用することができる。

第五十条 海警機構の職員は、違法犯罪行為と違法犯罪行為者の危険性、程度と緊急性に応じて、武器の使用に必要な制限を合理的に判断し、必要でない人員の死傷、財産の損失を可能な限り回避或いは減少させなければならない。

第五十一条 海警機構の職員による警察の装備と武器の使用は、この法律に規定されていない場合、警察の装備や武器の使用に関する規定及びその他の関連法律、法規の規定に従って執行する。

第七章 保障と協力

第五十二条 国は海警機構が海上権利保護、法律執行業務を遂行し、建設及び発展に見合った経費保証メカニズムを確立する。必要な資金は、国家の関連規定に従って予算に含まれる。

第五十三条 国務院の関連部門、沿海県級以上の地方人民政府及びその関連部門は、国土空間計画と関連特別計画を策定する際に、海上権利保護と法律執行業務の必要性を総合的に調整し、関連する国家規定に従って、海警機構の法律執行業務、訓練、生活等の場所と施設の建設を保障しなければならない。

第五十四条 海警機構は、海上権利保護と法律執行の緊急の必要性に応じて、法律、法規、規則の規定に従って、優先的に組織及び個人の交通手段、通信道具、場所を使用或いは収用し、使用後速やかに返還し、適切な費用を支払わなければならない。

第五十五条 海警機構は力量システムを最適化し、強力な人材チームを育成し、教育訓練を強化し、海警機構の職員が法的職責を遂行するための知識、スキル、品質を確保し、海上権利保護と法律執行の専門能力を向上させるべきである。
海上権利保護と法律執行は、認証及び資格管理システムの上で実行される。

第五十六条 国家は海上権利保護と法律執行設備システムの構築を強化し、海警機構がその職責遂行に見合った船舶、航空機、武器及びその他の装備を配備することを保障する。

第五十七条 海警機構は情報化の構築を強化し、最新の情報技術を運用し、法律執行の開放を促進し、便宜性のあるサービスを強化し、海上権利保護と法律執行業務の効率を高める必要がある。
海警機構は海上警報サービスプラットフォームを開設し、速やかに国民からの通報、緊急救助要請を受け入れる。

第五十八条 海警機構は対応する外交(外務)、公安、自然資源、生態環境、交通運輸、漁業・漁業管理、緊急事態管理、税関等の管轄部門、及び人民裁判所、人民検察院、関連する軍隊部門と情報共有と業務協力のメカニズムを確立する。
関連する管轄部門は、海警機構に海上権利保護と法律執行業務の執行に関連する基本データ、行政許可、行政管理政策等の情報サービスと技術サポートを提供しなければならない。
海警機構は海上の監督検査、違法犯罪の調査・処罰等の業務データ、情報を速やかに関係する管轄当局にフィードバックし、関係する管轄当局と協力して海上行政管理業務を行う。海警機構は法律に従って行政処罰を課し、許可証の取り消しが必要であると判断した場合は、関連資料を発行機関に移送し、処理しなければならない。

第五十九条 海警機構は、海上の権利保護との法律執行業務を行う必要がある場合には、関連する管轄当局に援助を要請することができる。援助の要請が関連する管轄当局の職責範囲内に属する場合、関連する管轄当局は協力しなければならない。

第六十条 海警機構は、法律に従って行政拘留を決定した違法行為者と拘留審査を行う外国人、及び刑事拘留、逮捕を執行する容疑者に対し、それぞれ海警機構が所在する拘置所或いは留置場に送られ、執行される。

第六十一条 海警機構は法律に従って押収、差し押さえた事件に関与する財産を適切に保管し、毀損或いは無断で処分してはならない。但し、以下の貨物、物品は、市級海警局以上の海警機構の責任者の承認を得て、法律に従って競売或いは売却され、所有者に通知され、所有者が明確でない場合には、他の当事者に通知する。
(一)精製油等の危険品
(二)生鮮、腐りやすく、無効になりやすい等の長期保存に敵していない。
(三)長期不使用によって機械特性の低下、価値の低下を引き起こす可能性のある車両、船舶等。
(四)サイズが大きく、保管が困難な場合。
(五)所有者は最初の競売或いは売却を申請する場合。
競売或いは売却による収益は、海警機構によって一時的に保存され、事件が解決された後、国家の関連規定に従って処理される。

第六十二条 海警機構は、所有者或いはその他の当事者に返還すべき関連財産について、六ヶ月以内に所有者或いはその他の当事者に通知しなければならない。所有者が明確でない場合は、公告方式を用いて所有者に認知を通知しなければならない。所有者、その他の当事者或いは公告の通知後六ヶ月以内に受け取らない場合、所有されていない財産として扱い、法律に従って競売或いは売却された後、国庫に引き渡される。特別な事情がある場合には、処理を延期することができる。最大延長期間は三ヶ月を超えてはならない。

第八章 国際協力

第六十三条 中国海警局は中華人民共和国が締結し、参加している国際条約に従って、或いは対等、相互利益の原則に従って、海上法律執行における国際協力を行う。所定の権限内で、海上法律執行に関する国際条約の実施業務を組織或いは参加し、海上法律執行協力文書に署名する。

第六十四条 海上法律執行における海警機構の国際協力の主な任務は、外国関連の海上緊急事態への対応、海上法律執行紛争の協調的解決、海上危機の管理、外国の海上法律執行機構と関連国際組織と協力して、海上犯罪活動との闘い、海洋資源環境の保護、国際及び地域の海洋の公共の安全と秩序を共同で維持する。

第六十五条 海警機構は外国の海上法律執行機構及び関連する国際組織と以下の海上法律執行国際協力を実施することができる。
(一)二国間、多国間の海上法律執行協力メカニズムを確立し、海上法律執行協力メカニズムの活動に参加
(二)海上法律執行情報の交換と共有
(三)海上共同パトロール、検査、演習、訓練
(四)教育訓練交流
(五)海上法律執行における国際協力ための連絡官の相互派遣
(六)その他の海上法律執行の国際協力活動。

第九章 監督

第六十六条 海警機構及びその職員は法律、法規に定める条件、権限と手続きに従って職責を遂行し、職権を行使する。その職権を濫用し、職務を怠り、個人的な利益のために不正行為を行う或いは、組織及び個人の正当な権利及び利益を侵害してはならない。

第六十七条 海警機構は、公民、法人、その他の団体が海警機構の法律執行業務を知り、参加し、監督する権利を尊重及び保障し、法律執行業務の透明性と信頼性を高めるべきである。
海警機構は法律に従って海上法律執行業務に関する情報を開示するべきである。

第六十八条 海警機構の問い合わせ、尋問、継続的な尋問、容疑者を特定し、容疑者の保安検査、情報収集等の法律執行活動は、事件処理場で実施しなければならない。緊急時には、現場での問い合わせ、尋問、その他の事件現場での問い合わせ、尋問が適切でない場合を除く。
海警機構は国の関連規定に従い、テキスト、音声ビデオ等の形式で海上権利保護と法律執行活動の全過程を記録し、分類し、保存しなければならない。

第六十九条 海警機構及びその職員は、海上権利保護と法律執行業務を行い、法律に従って検察機関、軍隊の監督機関による監督を受ける。

第七十条 人民政府及びその関連部門、公民、法人及びその他の組織は海警機構及びその職員に対する違法行為及び規律違反について、検察機関、軍隊監察機関に通知、告発、訴える権利を有する。海警機構とその職員による法律、法規の違反、或いは義務の怠慢は、海上警報サービスプラットフォームを通じて苦情を申し立て、報告することができる。
法律に従って告発、告訴、或いは申立、通報する公民、法人及びその他の組織に対して、いかなる機関及び個人も、抑圧や報復をしてはならない。

第七十一条 上級海警機構は下級海警機構の海上権利保護と法律執行業務を監督し、その措置或いは決定が間違っていることが判明した場合には、撤回、変更或いは下級海警機構に撤回、変更するよう命じる権利を有する。法定の義務を果たしていないことが判明した場合、法律に従って履行を命じる権利を有する。

第七十二条 中国海警局は、海上権利保護と法律執行業務の監督メカニズムと法律執行の過失に対する説明責任のシステムを確立し、改善しなければならない。

第十章 法律責任

第七十三条 海警機構及びその職員が法律に従って職務を遂行するのを妨げる以下の行為の一つがある場合、公安機関或いは海警機構が「中華人民共和国治安管理処罰法」に従い、人民警察が法律に従って職務を遂行するのを妨げたとして処罰する。
(一)海警機構の職員を侮辱、脅迫、監禁、迎撃、襲撃した場合
(二)調査と証拠収集を妨害する場合
(三)臨時海上警備区域に強制的に侵入する場合
(四)追跡、検査、捜査、救助、警備等の任務の遂行を妨害する場合
(五)法律執行の船舶、航空機、車両及び人員の通行を妨害する場合
(六)船舶を脱出させるために危険な運転、障害物を設置等の方法で、法律執行の船舶及び
職員の安全を危険にさらす場合
(七)海警機構及びその職員の職務の執行を著しく妨げるその他の行為

第七十四条 海警機構の職員はその職務を遂行において、以下のいずれかの行為においては、中央軍事委員会の関連規定に従って処罰されるものとする。
(一)国家機密、商業秘密、個人のプライバシーを漏らした場合
(二)虚偽の行為をし、事件を隠蔽し、違法行為を保護し、容認した場合
(三)拷問による自白の強要或いは体罰、容疑者を虐待した場合。
(四)規定に違反して、警察の装備や武器を使用した場合。
(五)人身の自由を不法に奪い、制限し、人、貨物、物品、交通手段、住居或いは場所を違法に検査或いは捜査した場合。
(六)恐喝、贈賄の勧誘・受領、或いは当事者及びその代理人からの贈答品を受領した場合。
(七)行政処罰、行政の強制的な執行を違法に実施し、刑事強制措置を講じた或いは料金を徴収した場合
(八)職務を怠り、法的義務を果たさなかった場合。
(九)その他の違法行為。

第七十五条 この法律の規定に違反して犯罪を構成する者は、法律に従って刑事責任を追及される。

第七十六条 組織と個人が海警機構による行政行為に不服を申し立てた場合、「中華人民共和国行政再議法」の規定に従い、上級の海警機構に行政再議を申請する権利を有する。或いは「中華人民共和国行政訴訟法」の規定に従い、管轄権を有する人民裁判所に行政訴訟を提起する権利を有する。

第七十七条 海警機構及びその職員が違法にその職権を行使し、組織及び個人の正当な権利と利益を侵害し、損害を与えた場合、「中華人民共和国国家賠償法」とその他の関連法律、法規の規定に従って賠償しなければならない。

第十一章 付則

第七十八条 この法律における以下の用語の意味は次の通りである:
(一)省級海警局とは、中国海警局が直接主導し、沿岸部、自治区、直轄市に設立された海警局を指す。市級海警局とは、省級海警局が主導し、沿岸部、自治区、直轄市に設立された海警局を指す。海警派出所とは、通常は市海警局が主導し、沿岸の郡レベルの行政区域に設立された末端海警機構を指す。
(二)船舶とは、海上石油、天然ガス等業務プラットフォームを除く、各種排水或いは非排水船、ボート、いかだ、水上飛行機、潜水艇等の移動式装置を指す。

第七十九条 外国が海上法律執行において我が国の公民、法人、その他の組織に対して差別的な禁止、制限、又はその他の特別措置をとっている場合、海警機構は国家の関連規定に従って、対応する措置を講じることができる。

第八十条 この法律に規定する船舶に対する権利保護と法律執行措置は、海上における各種の固定或いは浮動建物、装置、固定或いは移動式プラットフォームに適用される。

第八十一条 海警機構は法律、法規及び我が国が締結し、参加している国際条約に従い、我が国の管轄する海域以外の地域で法律執行任務を遂行する場合、関連する手続きは、この法律の関連規定に従って実施することができる。

第八十二条 中国海警局は、法律、行政法規と国務院、中央軍事委員会の決定に従い、海上権利保護と法律執行に関する事項について規則を定め、その規定に従って備案する。

第八十三条 海警機構は「中華人民共和国国防法」、「中華人民共和国人民武装警察法」等の関連法律、軍事法規と中央軍事委員会の命令に従い、防衛作戦等の任務を遂行する。

第八十四条 この法律は2021年2月1日から施行される。

(中国語原文)
http://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202101/ec50f62e31a6434bb6682d435a906045.shtml