210122_中華人民共和国行政処罰法(日本語試訳)

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中華人民共和国行政処罰法

(1996年3月17日第8回全国人民代表大会第4回会議を通過し、2009年8月27日第11回全国人民代表大会常務委員会第10回会議「一部の法律の改正に関する決定」に基づき、一回目の修正がなされ、2017年9月1日の第12回全国人民代表大会常務委員会第29回会議「中華人民共和国法官法の改正等8本の法律決定」に基づき、第2回修正がされ、2021年1月22日の第13回全国人民代表大会常務委員会第25回会議により改訂された)

目次

第一章 総則
第二章 行政処罰の種類と設定
第三章 行政処罰の実施機関
第四章 行政処罰の管轄と適用
第五章 行政処罰の決定
第一節 一般規定
第二節 簡易手続
第三節 通常手続
第四節 聴聞手続
第六章 行政処罰の執行
第七章 法律責任
第八章 付則

第一章 総則

第一条 行政処罰の設定と実施を規範化させ、行政機関が行政管理を効果的に実施し、公共の利益と社会秩序を維持し、公民、法人或いはその他組織の合法的権益を保護及び監督するために、憲法に基づき、本法を制定する。

第二条 行政処罰とは、行政機関が法に基づき行政管理秩序に違反する公民、法人或いはその他の組織に対し、権益を減少させ、或いは義務を増加する方法で懲戒する行為をいう。

第三条 行政処罰の設定と実施は、本法を適用する。

第四条 公民、法人或いはその他の組織が行政管理秩序に違反する行為は、行政処罰を与えなければならない場合、本法に基づき法律、法規、規則により規定し、かつ行政機関が本法の規定する手続により実施する。

第五条 行政処罰は公正、公開の原則に従う。
行政処罰の設定及び実施は事実を根拠としなければならず、違法行為の事実、性質、情状及び社会的危害の程度に相当する。
違法行為に対して行政処罰を与える規定は公布しなければならない。公布されていなければ、行政処罰が依拠することはできない。

第六条 行政処罰を実施し、違法行為を是正する場合、処罰と教育を結合し、公民、法人或いはその他組織の自覚的順法を教育することを堅持しなければならない。

第七条 公民、法人或いはその他の組織が行政機関に与えられた行政処罰については、陳述権、弁明権を有し、行政処罰に不服がある場合は、法に基づき行政再審査を申請し、或いは行政訴訟を提起する権利がある。
公民、法人或いはその他の組織が行政機関より違法に行政処罰を与えられ、損害を受けた場合、法に基づき賠償請求をする権利がある。

第八条 公民、法人或いはその他の組織が違法行為により行政処罰を受け、その違法行為が他人に損害を与えた場合、法に基づき民事責任を負わなければならない。
違法行為が犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及しなければならない場合、行政処罰が刑事処罰に代わることはできない。

第二章 行政処罰の種類と設定

第九条 行政処罰の種類
(一)警告、批判の通報
(二)罰金、違法所得の没収、不法財産の没収
(三)許可証の留保、資格等級の降格、許可証の取消
(四)生産経営活動展開の制限、生産停止命令、閉鎖命令、就業制限
(五)行政拘留
(六)法律、行政法規に規定されたその他の行政処罰

第十条 法律は各種の行政処罰を設定することができる。
人身の自由を制限する行政処罰は法律でしか設定できない。

第十一条 行政法規は、人身の自由を制限する以外の行政処罰を設定することができる。
法律が違法行為に対してすでに行政処罰規定を定めており、行政法規が具体的に規定する必要がある場合、法律で規定された行政処罰を与える行為、種類と領域の範囲内で規定しなければならない。
法律は違法行為に対して行政処罰規定を設けていない。行政法規は法律を実施するために、行政処罰を追加設定することができる。行政処罰を追加的に設定する場合、公聴会、論証会等の形式を通じて広く意見を聴聞し、制定機関に書面で説明しなければならない。行政法規が届出をする時、追加的に行政処罰を設定する状況を説明しなければならない。

第十二条 地方法規は、人身の自由制限、営業許可証の取消以外の行政処罰を設定することができる。
法律、行政法規が違法行為に対してすでに行政処罰規定を設定している場合、地方法規は具体的に規定する必要がある。法律、行政法規に規定された行政処罰を与える行為、種類と領域の範囲内で規定しなければならない。
法律、行政法規が違法行為に対して行政処罰規定を設けていない場合、地方法規は法律、行政法規を実施するために、行政処罰を追加設定することができる。行政処罰を追加設定する場合、公聴会、論証会等の形式を通じて広く意見を聴聞し、制定機関に書面で説明しなければならない。地方性規が届出をされる際、行政処罰を追加設定する状況を説明しなければならない。

第十三条 国務院部門規則は、法律、行政法規に規定する行政処罰を与える行為を、種類と領域の範囲内で具体的に規定することができる。
法律、行政法規がまだ制定されていない場合、国務院部門の規則は行政管理秩序に違反する行為に対し、警告、批判通報或いは一定額の罰金を科する行政処罰を設定することができる。罰金の限度額は国務院が規定する。

第十四条 地方政府の規則は法律、法規が規定する行政処罰を与える行為に、種類と領域の範囲内で具体的に規定することができます。
法律、法規が制定されていない場合、地方政府の規則は行政管理秩序に違反する行為に対して、警告、批判通報或いは一定額の罰金を科する行政処罰を設定することができる。罰金の限度額は省、自治区、直轄市人民代表大会常務委員会が規定する。

第十五条 国務院部門と省、自治区、直轄市人民政府及びその関係部門は、行政処罰の実施状況及び必要性を定期的に組織評価し、不適切な行政処罰事項及び種類、罰金額等については、修正或いは廃止の提案を提出しなければならない。

第十六条 法律、法規、規則以外に、その他の規範性文書は行政処罰を設定してはならない。

第三章 行政処罰の実施機関

第十七条 行政処罰は行政処罰権を有する行政機関が法定職権の範囲内で実施する。

第十八条 国家は都市管理、市場監督管理、生態環境、文化市場、交通運輸、応急管理、農業等の分野で総合行政法執行制度を推進し、相対的に集中行政処罰権を有する。
国務院或いは省、自治区、直轄市人民政府は、一つの行政機関が関連行政機関の行政処罰権を行使することを決定することができる。
人身の自由を制限する行政処罰権は公安機関と法律に規定された他の機関によってのみ行使される。

第十九条 法律、法規が授権する公共の事務機能を管理する組織が法定の授権範囲内で行政処罰を実施することができる。

第二十条 行政機関は、法律、法規、規則の規定に基づき、その法定権限内に書面をもって本法第二十一条の規定条件に合致する組織に行政処罰を委託することができる。行政機関はその他の組織或いは個人に行政処罰の実施を委託してはならない。
委託書は、委託の具体的な事項、権限、期限等を明記しなければならない。委託行政機関と受託組織は、委託書を社会に公表しなければならない。
委託行政機関は、受託組織による行政処罰の実施について監督を行い、その行為の結果に対して法律責任を負わなければならない。
受託組織は委託の範囲内において、行政機関の名義で行政処罰を実施する。その他の組織或いは個人に委託して行政処罰を実施してはならない。

第二十一条 受託組織は以下の条件に適合していなければならない。
(一)法律に基づいて成立し、公共事務を管理する機能を有する
(二)関連法律、法規、規則と業務を熟知し、行政法執行資格を取得した業務職員を有する
(三)技術検査或いは技術鑑定が必要な場合、相応する技術検査或いは技術鑑定を組織するための条件があること

第四章 行政処罰の管轄と適用

第二十二条 行政処罰は違法行為発生地の行政機関が管轄する。法律、行政法規、部門規則に別途規定がある場合、その規定に従う。

第二十三条 行政処罰は、行政処罰権の行政機関管轄を有する県級以上の地方人民政府による。法律、行政法規に別途規定がある場合は、その規定に従う。

第二十四条 省、自治区、直轄市は現地の実情に基づき、末端の管理の緊急必要性がある県級人民政府部門の行政処罰権を効果的に受けることができる郷鎮人民政府、街道事務所に引き渡し、定期的に評価を行うことができる。決定は公表すべきである。
行政処罰権を受けた郷鎮人民政府、街道事務所は法律執行能力の構築を強化し、規定の範囲に従い、法定の手続に従って行政処罰を実施しなければならない。
地方人民政府及びその部門については、組織の協調、業務指導、法律執行監督を強化し、行政処罰の協調メカニズムを確立し、健全化し、評議、審査制度を強化しなければならない。

第二十五条 二つ以上の行政機関がいずれも管轄権を有する場合、最初に立案した行政機関が管轄する。

管轄に対して争議が発生した場合は、協議して解決しなければならず、協議が成立しない場合は、共同の上級行政機関に届け出て管轄の指定を受けることもできる。

第二十六条 行政機関は行政処罰の実施の必要により、関係機関に協力を要請することができる。協力事項は請求された機関の職権範囲内に属する場合、法に基づき協力しなければならない。

第二十七条 違法行為に犯罪の疑いがある場合、行政機関は適時に司法機関に案件を移送し、法に基づき刑事責任を追及しなければならない。法に基づく刑事責任の追及或いは、刑事処罰を免除する必要はないが、行政処罰を与えなければならない場合、司法機関は適時に案件を関連行政機関に移送しなければならない。
行政処罰実施機関と司法機関の間で協調と協力を強化し、案件移送制度を確立し、健全化し、証拠資料の引渡し、接収を強化し、事件処理情報の通報メカニズムを改善しなければならない。

第二十八条 行政機関は行政処罰を実施する場合、当事者に対し、違法行為を是正或いは期限を定めて是正させるべきである。
当事者が違法所得を有している場合は、法に基づき賠償すべきものを除き、没収しなければならない。違法所得とは、違法行為を実施して取得した金銭をいう。法律、行政法規、部門規則は違法所得の計算に対して別途規定がある場合、その規定に従う。

第二十九条 当事者の同一の違法行為に対して、2回以上の罰金を科する行政処罰を与えてはならない。同一の違法行為が複数の法律規範に違反した場合に罰金を科すべき場合、罰金額の高い規定により処罰する。

第三十条 14歳未満の未成年者に違法行為があった場合、行政処罰を与えず、保護者にしつけを命じる。既に14歳に達し18歳未満の未成年者に違法行為があった場合、軽い行政処罰或いは行政処罰を減刑しなければならない。

第三十一条 精神障害者、知的障害者が自分の行為を識別できない、或いは制御できない時に違法行為があった場合は、行政処罰を受けない。但し、その保護者に厳重な看護及び治療を命じなければならない。精神障害者が精神正常時に違法行為をした場合、行政処罰を与えなければならない。完全に識別能力を失っている訳ではない或いは自分の行為を制御する能力のある精神障害者、知的障害者に違法行為がある場合は、軽い行政処罰或いは行政処罰を軽減することができる。

第三十二条 当事者は次の各号のいずれかに該当する場合、軽い行政処罰或いは行政処罰を軽減しなければならない。
(一)自主的に違法行為の危害の結果を除去或いは軽減させた場合
(二)他人に脅迫され、或いは騙されて、違法行為を実施した場合
(三)行政機関がまだ把握していない違法行為を自ら供述した場合
(四)行政機関の違法行為の取締に協力し、態度に功績がある場合
(五)法律、法規、規則の規定その他により、軽い行政処罰或いは行政処罰を軽減しなければならない場合。

第三十三条 違法行為が軽微で適時に是正され、危害ある結果をもたらさなかった場合、行政処罰を行わない。初回の違法でかつ被害が小さく、適時に改正された場合、行政処罰をしないこともできる。
当事者に主観的過失がないことを証明する証拠がある場合、行政処罰をしない。法律、行政法規に別途規定がある場合は、その規定に従う。
当事者の違法行為を法に基づき行政処罰しない場合、行政機関は当事者を教育しなければならない。

第三十四条 行政機関は、法に基づき行政処罰の裁量基準を制定し、行政処罰の裁量権を行使することを規範化させることができる。行政処罰の裁量基準は社会に公表しなければならない。

 

第三十五条 違法行為が犯罪を構成し、人民法院が拘留或いは有期懲役を言い渡し、行政機関がすでに当事者に行政拘留を与えている場合、法に基づき相応の刑期を控除しなければならない。
違法行為が犯罪を構成し、人民法院が罰金を科し、行政機関はすでに当事者に罰金を課している場合、相応の罰金を減額しなければならない。行政機関が未だ罰金を課していない場合、もはや罰金は課されない。

第三十六条 違法行為が二年以内に発見されなかった場合、行政処罰を与えない。公民の生命の健康安全、金融の安全及び危害ある結果に及ぶ場合、上記の期限は五年まで延長される。法律に別段の規定がある場合を除く。
前項に規定する期限は、違法行為が発生した日から計算する。違法行為が連続或いは継続した状態の場合、行為の終了した日から計算する。

第三十七条 行政処罰を実施には、違法行為が発生した場合の法律、法規、規則の規定が適用される。但し、行政処罰の決定をする際、法律、法規、規則はすでに改正されて或いは廃止され、かつ、新しい規定により処罰が軽い或いは違法とされない場合、新しい規定を適用する。

第三十八条 行政処罰は根拠がなく、或いは主体が行政主体資格を有していない場合、行政処罰は無効とする。
法定手続に違反して重大かつ著しく違法を構成する場合、行政処罰は無効となる。

第五章 行政処罰の決定

第一節 一般規定

第三十九条 行政処罰の実施機関、立案根拠、実施手続及び救済手段等の情報は公示されなければならない。

第四十条 公民、法人或いはその他の組織による行政管理秩序に違反する行為に、法に基づき行政処罰を与えなければならない場合、行政機関は事実を明らかにしなければならない。違法事実が不明確、証拠が不足する場合、行政処罰を与えてはならない。

第四十一条 行政機関は法律、行政法規の規定に基づいて電子技術を利用して設備を監視し、違法事実を収集し、固定する場合、法制と技術審査を経て、電子技術監視設備が標準に適合し、合理的、標準が明らかであることを確保し、設置場所は社会に公表しなければならない。
電子技術監視装置が違法な事実を記録するには、真実、明確、完全、正確でなければならない。行政機関は記録内容が要求に合致しているかどうかを審査しなければならない。審査を経ていない或いは審査を経て要求に合致しない場合、行政処罰の証拠としてはならない。
行政機関は適時に当事者の違法事実を通知し、情報化手段或いはその他の措置を講じ、当事者の照会、陳述及び弁明のために便宜を提供しなければならない。当事者の有する陳述権、弁明権を制限或いは形を変えて制限してはならない。

第四十二条 行政処罰は行政法執行資格を有する法律執行者によって実施されなければならない。法律に別の規定がある場合を除き、法律執行者は二人より少なくてはならない。
法律執行者は文明的に法を執行し、当事者の合法的権益を尊重し保護しなければならない。

第四十三条 法律執行者と案件が直接利害関係を有し、或いはその他の関係が公正な法執行に影響を及ぼす可能性がある場合は、回避しなければならない。
当事者は、法律執行者と案件が直接利害関係を有し、或いはその他の関係が公正な法執行に影響を及ぼす可能性がある場合、回避を申請する権利を有する。
当事者が回避申請を提出した場合、行政機関は法に基づき審査し、行政機関の責任者が決定しなければならない。決定前には、調査を中止しない。

第四十四条 行政機関は、行政処罰の決定をする前に、実行予定の行政処罰の内容と事実、理由、根拠を当事者に通知し、かつ当事者が法に基づき享有する陳述、弁明、要求の聴聞等の権利を通知しなければならない。

第四十五条 当事者は、陳述と弁明を行う権利がある。行政機関は、当事者の意見を十分に聴聞し、当事者が提出した事実、理由及び証拠については、再審査を行わなければならない。当事者が提出した事実、理由或いは証拠が成立した場合、行政機関はこれを採用しなければならない。
行政機関は、当事者の陳述、弁明によってより重い処罰を与えてはならない。

第四十六条 証拠は以下を含む。
(一)書証
(二)物証
(三)視聴資料
(四)電子データ
(五)証人証言
(六)当事者の陳述
(七)鑑定意見
(八)監査記録、現場記録
証拠は必ず検証して事実であることを確認しなければならず、当事者は案件の事実を認定する根拠とすることができる。
違法手段で取得した証拠は、案件の事実を認定する根拠としてはならない。

第四十七条 行政機関は法律に基づいて文字、音像等の形式で行政処罰の開始、調査検証、審査、決定、送達、執行等に対する全過程の記録を行い、分類保存しなければならない。

第四十八条 一定の社会的影響を有する行政処罰決定は、法に基づき公開しなければならない。
公開された行政処罰決定が法に基づき変更され、取り消され、違法或いは無効が確認された場合、行政機関は3日以内に行政処罰決定情報を撤回し、その理由を公開して説明しなければならない。

第四十九条 重大な伝染病の疫病等の突発事件が発生し、突発事件による社会的危害を制御、軽減、除去するため、行政機関は突発事件に対する対応措置に違反する行為に対して、法に基づき迅速に、重い処罰を行う。

第五十条 行政機関及びその業務職員は、行政処罰の実施において知り得た国家秘密、商業秘密或いは個人情報については、法に基づき秘密を保持しなければならない。

第二節 簡易手続

第五十一条 違法事実が確実で法定根拠があり、公民に対して二百元以下、法人或いはその他の組織に三千元以下の罰金或いは警告の行政処罰を科す場合、その場で行政処罰決定をすることができる。法律には別の規定がある場合は、その規定に従う。

第五十二条 法律執行者はその場で行政処罰決定を行う場合、当事者に法律執行証明書を提示し、所定の書式を記入し、番号のある行政処罰決定書を作成し、その場で当事者に引き渡しなければならない。当事者が署名を拒否する場合、行政処罰決定書に明記しなければならない。
前項に規定された行政処罰決定書は、当事者の違法行為、行政処罰の種類と根拠、罰金額、時間、場所、行政再審査の申請、行政訴訟の提起の方法と期限及び行政機関名を記載し、かつ、法律執行者が署名或いは捺印する。
法律執行者がその場で行った行政処罰決定は、所属行政機関に報告して記録に載せなければならない。

第五十三条 その場で行われる行政処罰の決定については、当事者は本法第六十七条から第六十九条までの規定に従い履行しなければならない。

第三節 通常手続

第五十四条 本法第五十一条に規定されたその場で行われる行政処罰を除いて、行政機関が公民、法人或いはその他の組織が法に基づき行政処罰を与えるべき行為を発見した場合、全面的、客観的、公正に調査し、関連証拠を収集しなければならない。必要な場合、法律、法規の規定に基づき、検査を行うことができる。
立案の基準に合致する場合、行政機関は適時に立案しなければならない。

第五十五条 法律執行者は調査或いは検査を行う際、自発的に当事者或いは関係者に法律執行証明書を提示しなければならない。当事者或いは関係者は、法律執行者に対し、法の執行証明書の提示を要求する権利がある。法律執行者が法の執行証明書を提示しない場合、当事者或いは関係者は調査或いは検査を拒否する権利がある。
当事者或いは関係者は、ありのままに質問に答え、調査或いは検査に協力し、拒否或いは妨害してはならない。尋問或いは検査は調書を作成しなければならない。

第五十六条 行政機関は証拠を収集する際、サンプル抽出の方法を取ることができる。証拠が滅失する可能性がある場合、或いは以後取得が困難になる状況になる場合、行政機関の責任者の承認を得て、先に登録して保存し、7日間以内に直ちに処理決定をしなければならない。この間、当事者或いは関係者は証拠を廃棄或いは移転してはいけない。

第五十七条 調査は終了し、行政機関の責任者は調査結果を審査し、状況によっては、それぞれ次のように決定しなければならない。
(一)確かに行政処罰に関わる違法行為がある場合、情状の軽重及び具体的な状況に基づき、行政処罰の決定を行う。
(二)違法行為が軽微で、法に基づき行政処罰をしなくても構わない場合、行政処罰をしない。
(三)違法事実が成立しない場合、行政処罰をしない。
(四)違法行為に犯罪の疑いがある場合は、司法機関に移送する。
情状が複雑である、或いは重大な違法行為に対して行政処罰を与える場合、行政機関の責任者は集団で検討して決定しなければならない。

第五十八条 次のいずれかに該当する場合、行政機関の責任者は行政処罰の決定をする前に、行政処罰の決定に従事する法制審査の人員によって法制審査を行わなければならない。法制審査或いは審査を経て通らなかった場合、決定をしてはならない。
(一)重大な公共利益にかかわる場合
(二)直接、当事者或いは第三者の重大な権益に関係し、聴聞手続を経た場合。
(三)案件の状況が複雑で、複数の法律関係にかかわる場合。
(四)法律、法規の規定により法制審査を行わなければならないその他の状況。
行政機関の中で最初に行政処罰決定法の審査に従事する者は、国家統一法律職業資格試験を通じて法律職業資格を取得しなければならない。

第五十九条 行政機関は本法第五十七条の規定に基づき行政処罰を与え、行政処罰決定書を作成しなければならない。行政処罰決定書は次の事項を記載しなければならない。
(一)当事者の氏名或いは名称、住所。
(二)法律、法規、規則に違反する事実と証拠。
(三)行政処罰の種類と根拠。
(四)行政処罰の履行方法と期限。
(五)行政再審査を申請し、行政訴訟を提起する道筋と期限。
(六)行政処罰の決定をする行政機関の名称と決定を下す期日。
行政処罰決定書は行政処罰の決定をする行政機関の印章を捺印しなければならない。

第六十条 行政機関は、行政処罰案件の立案日から九十日以内に行政処罰決定をしなければならない。法律、法規、規則に別途規定がある場合は、その規定に従う。

第六十一条 行政処罰決定書は宣告後直ちに当事者にその場で交付しなければならない。当事者が不在の場合、行政機関は七日間以内に「中華人民共和国民事訴訟法」の関連規定に基づき、行政処罰決定書を当事者に送付しなければならない。
当事者が同意し、確認書を締結した場合、行政機関はファックス、電子メール等の方法で行政処罰決定書等を当事者に送付することができる。

第六十二条 行政機関及びその法律執行者は、行政処罰決定をする前に、本法第四十四条、第四十五条の規定に従って当事者に対し、執行しようとする行政処罰の内容及び事実、理由、根拠を通知せず、或いは当事者の陳述、弁明を拒否して、行政処罰の決定をしてはならない。当事者が明確に権利の陳述又は弁論を放棄する場合は除外される。

 

第四節 聴聞手続

第六十三条 行政機関は下記の行政処罰決定をしようとする場合、当事者に聴聞を要求する権利があることを通知しなければならない。当事者が聴聞を要求する場合、行政機関は聴聞を手配しなければならない。
(一)比較的多額の罰金
(二)比較的多額の違法所得を没収し、比較的価値の高い不法財産の没収
(三)資格の等級降格、許可証を取消
(四)生産停止を命じ、業務の停止、制限を命じる
(五)その他の重い行政処罰
(六)法律、法規、規定に定められたその他の状況
当事者は行政機関の手配する聴聞費用を負担しない。

第六十四条 聴聞は以下の手続に従って手配されなければならない。
(一)当事者が聴聞を要求する場合、行政機関に通知してから五日間以内に提出しなければならない。
(二)行政機関は、聴聞を行う7日前までに、当事者及び関係者に聴聞の時間、場所を通知しなければならない。
(三)国家機密、商業秘密或いは個人情報が法に基づき非公開とされている場合を除き、公聴会が開催される。
(四)聴聞は行政機関が指定した非本件調査員が主宰し、当事者が主宰者と本件との直接的な利害関係があると判断した場合、回避を申請する権利がある。
(五)当事者は自ら聴聞に参加することができる。一人から二人の代理を依頼することもできる。
(六)当事者及びその代理人が正当な理由なく聴聞に出席しない、或いは許可を得ずに中途で聴聞を退出した場合、聴聞権を放棄したと見なし、行政機関は聴聞を終了する。
(七)聴聞を行う際、調査員は当事者の違法な事実、証拠と行政処罰の提案を提出し、当事者は弁明と質証を行う。
(八)聴聞は調書を作成しなければならない。記録は当事者或いはその代理人が確認し、署名或いは捺印しなければならない。当事者或いはその代理人が署名或いは捺印を拒否した場合は、聴聞主宰者が記録に明記する。

第六十五条 聴聞終了後、行政機関は聴聞記録に基づいて、本法第五十七条の規定に従い、決定をしなければならない。

第六章 行政処罰の執行

第六十六条 行政処罰が法律により決定された後、当事者は行政処罰決定書に明記された期限内に履行しなければならない。
当事者が確かに経済的に困難であり、罰金の延納或いは分割納付が必要な場合、当事者の申請と行政機関の承認を経て、延納或いは分割納付をすることができる。

第六十七条 罰金決定をした行政機関は罰金徴収の機関と分離されなければならない。
本法第六十八条、第六十九条の規定に基づき、その場で徴収した罰金を除き、行政処罰決定をした行政機関及びその法律執行者は自ら罰金を徴収してはならない。
当事者は、行政処罰決定書を受け取った日から15日以内に、指定された銀行或いは電子支払システムを通じて罰金を納めなければならない。銀行は罰金を徴収し、罰金を直接国庫に納めなければならない。

第六十八条 本法第五十一条の規定によりその場で行政処罰の決定を行い、下記の状況の一つがある場合、法律執行者はその場で罰金を徴収することができる。
(一)法に基づき100元以下の罰金を課す場合
(二)その場で徴収せず事後に執行することができない場合

第六十九条 国境付近、水上、交通が不便な地域において、行政機関及びその法律執行者は本法第五十一条、第五十七条の規定に基づいて罰金を決定した後、当事者が指定の銀行に赴く或いは、電子支払システムによる罰金支払が確かに困難である場合、当事者の提起により、行政機関及びその法律執行者はその場で罰金を徴収することができる。

第七十条 行政機関及びその法律執行者がその場で罰金を徴収する場合、当事者に国務院財政部門或いは省、自治区、直轄市人民政府財政部門が統一的に発行した専用納付書を発行しなければならない。財政部門が統一的に発行した専用納付書を発行しない場合、当事者は罰金の支払いを拒否する権利がある。

第七十一条 法律執行者が現場徴収した罰金は、罰金を徴収した日から二日以内に行政機関に納めなければならない。海上において現場徴収した罰金は、着岸した日から二日以内に行政機関に納めなければならない。行政機関は二日以内に指定された銀行に罰金を納付しなければならない。

第七十二条 当事者が期限を過ぎて行政処罰の決定を履行しない場合、行政処罰の決定をした行政機関は次の措置を取ることができる。
(一)期限になっても罰金を納めない場合、罰金の額を超過しない範囲で、毎日の罰金額の百分の三を加算して罰金を科す。
(二)法律の規定により、差押、押収した財物を競売、法に基づき処理し、或いは凍結した預金、送金から罰金を控除する。
(三)法律の規定に基づき、他の行政強制執行方法を採用する。
(四)「中華人民共和国行政強制法」の規定に基づき、人民法院に強制執行を申請する。
行政機関が延納、分割払の罰金を承認した場合、人民法院の強制執行を申請する期限は、延納或いは分割払の終了日から計算する。

第七十三条 当事者が行政処罰の決定に不服があり、行政再審査を申請し、或いは行政訴訟を提起した場合でも、法律に他の規定がある場合を除き、行政処罰の執行は停止しない。
当事者は、人身の自由を制限する行政処罰の決定に不服があり、行政再審査を申請し、或いは行政訴訟を提起する場合、決定した機関に対して執行猶予申請を提出することができる。法律の規定状況に適合する場合は、執行を猶予しなければならない。
当事者が行政再審査を申請し、或いは行政訴訟を提起する場合、罰金加算額には行政再審査或いは行政訴訟期間を計算しない。

第七十四条 法に基づき廃棄すべき物品を除き、法に基づき押収した違法財産は、国の規定に従い公開競売或いは国家の関連規定に従って処理しなければならない。
罰金、没収された違法所得或いは違法財産の競売の代金を没収する場合、すべて国庫に納めなければならず、いかなる行政機関或いは個人もいかなる形式でも留保、私的或いは個人的な利益に変容させてはならない。
罰金、没収された違法所得或いは違法財産の競売の代金を没収した場合、行政処罰決定をした行政機関及びその業務職員の審査、評価に直接或いは関連させてはならない。法に基づき返還、弁償すべき場合を除き、財政部門はいかなる形式でも行政処罰決定をした行政機関に罰金、没収した違法所得を返還し、或いは違法財産の競売の代金を没収してはならない。

第七十五条 行政機関は行政処罰に対する監督制度を確立し、健全化しなければならない。県級以上の人民政府は、行政法執行評議、審査を定期的に手配し、行政処罰に対する監督検査を強化し、行政処罰の実施を規範化し、保障しなければならない。

行政機関が行政処罰を実施するには、社会の監督を受けなければならない。公民、法人或いはその他の組織は、行政機関が行政処罰を実施する行為に対して、申立或いは告発する権利がある。行政機関は真摯に審査し、誤りがあることを発見した場合は、自発的に是正しなければならない。

第七章 法律責任

第七十六条 行政機関が行政処罰を実施し、次のいずれかの状況がある場合、上級行政機関或いは関係機関により是正を命じられ、直接責任を負う主管職員とその他の直接責任者に対して法に基づき処分を与えられる。
(一)法定の行政処罰根拠がない場合
(二)行政処罰の種類、領域を勝手に変えた場合
(三)法定の行政処罰手続に違反した場合
(四)本法第二十条の委託処罰に関する規定に違反した場合
(五)法律執行者が法律執行証明書を取得していない場合。
行政機関が立案基準に該当する案件に対して適時に立案していない場合、前項の規定により処理する。

第七十七条 行政機関が当事者を処罰し、罰金を適用しない、没収した財物・証券を使用する、或いは法定部門外による罰金、財物・証券の没収がある場合、当事者は拒絶する権利があり、また告発する権利がある。上級行政機関或いは関係機関により、使用された不法証券を徴収して廃棄し、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任者に対し法に基づき処分を与える。

第七十八条 行政機関が本法第六十七条の規定に違反して自ら罰金を徴収した場合、財政部門が本法第七十四条の規定に違反して罰金、没収した違法所得或いは競売代金を行政機関に返還する場合、上級行政機関或いは関係機関により是正を命じ、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任者に対し法に基づき処分を与える。

第七十九条 行政機関が罰金、没収された違法所得或いは財物を留保し、私的或いは私的なものに変容させた場合、財政部門或いは関係機関により追徴し、直接責任を負う主管職員とその他の直接責任者に対して法に基づき処分する。情状が深刻で犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。

法律執行者は職務上の便宜を利用し、他人の財物の請求或いは収受、罰金を自己のものとし、犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。情状が軽微であり、犯罪を構成しない場合、法に基づいて処分する。

第八十条 行政機関が差押・押収した財物を使用或いは毀損し、当事者に損害を与えた場合、法に基づき賠償し、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任者に対して、法に基づき処分を与えなければならない。

 

第八十一条 行政機関が違法に検査措置を実施し、或いは措置を執行し、公民の人身或いは財産に損害を与え、法人或いはその他の組織に損失を与えた場合、法に基づき賠償し、直接に責任を負う主管職員及びその他の直接責任者に対して、法に基づき処分を与えなければならない。情状が深刻で犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。

第八十二条 行政機関が、行政処罰を刑事処罰に代え、法に基づき司法機関に移管し刑事責任を追及すべき事件に対して移管しない場合、上級行政機関或いは関係機関により是正を命じ、直接責任を負う主管職員とその他の直接責任者に対して法に基づき処分を与える。情状が深刻で犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。

第八十三条 行政機関は、制止及び処罰をすべき違法行為を制止、処罰せず、公民、法人或いはその他組織の合法的権益、公共利益及び社会秩序が損害を受けた場合、直接責任を負う主管職員及びその他の直接責任者を法に基づき処分する。情状が深刻で犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。

第八章 付則

第八十四条 外国人、無国籍人、外国組織による中華人民共和国の領域内で違法行為があり、行政処罰を与えなければならない場合は、法律に別段の規定がある場合を除き、この法律を適用する。

第八十五条 本法では、「二日」「三日」「五日」「七日」の規定は平日を指し、法定の祝祭日を含まない。

第八十六条 この法律は2021年7月15日から施行される。

(中国語原文)
http://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202101/49b50d96743946bda545ef0c333830b4.shtml