230426_中華人民共和国反スパイ法(日本語試訳)

この日本語試訳は中国語文献理解の補助とするために無償で公開しているものです。厳密な解釈・理解は、必ず中国語原文を確認願います。

中華人民共和国反スパイ法

(2014年11月1日第十二期全国人民代表大会常務委員会第十一回会議にて採択 2023年4月26日第十四期全国人民代表大会常務委員会第二回会議にて改定)。

目次

第一章 総則
第二章 セキュリティ対策
第三章 調査と処分
第四章 保護と監督
第五章 法的責任
第六章 附則

第一章 総則

第一条 この法律は、憲法に基づき、反スパイ業務を強化し、スパイ行為を防止、抑制、処罰し、国家の安全を守り、国民の利益を保護するために制定される。

第二条 反スパイ業務は、党中央委員会の集中統一指導、国家安全保障の全体構想、公開業務と秘密業務の結合、専門業務と大衆路線の結合、積極的防御、法に基づく処罰、症状と根本原因の両面の治療を堅持し、国民のために国家安全保障の人民防衛線を構築しなければならない。

第三条 反スパイ業務は、法に基づき、人権を尊重・保障し、個人・団体の合法的権益を保護しながら行うものとする。

第四条 この法律でいうスパイ行為とは、次に掲げる行為をいう

(一) 中華人民共和国の国家安全に反する活動で、スパイ組織およびその代理人、または他者の指示もしくは資金提供により、または国内外の機関、組織もしくは個人と共謀して行われるもの。
(二) スパイ組織に加入し、またはスパイ組織およびその代理人から任務を受け、あるいはスパイ組織およびその代理人に依頼すること
(三) スパイ組織およびその代理人以外の国外の機関、組織もしくは個人が行う、または国内の機関、組織もしくは個人がそれらと共謀して行う、窃盗、スパイ行為、収賄、国家機密、情報その他の国家の安全および利益に関する文書、データ、情報および物品の不法提供または国家公務員に対する亡命の扇動、誘導、強要もしくは買収する活動
(四) スパイ組織とその代理人、または他者への指示や資金提供によって、あるいはそれらと共謀して国の内外の機関、組織、個人によって、国家機関、機密組織、重要情報インフラに対するサイバー攻撃、侵入、妨害、制御、破壊等の活動。
(五) 敵の攻撃目標を指示すること。
(六) その他のスパイ活動を行うこと。

本法は、スパイ組織およびその代理人が中華人民共和国の領域内で第三国に対するスパイ活動を行い、または中華人民共和国の公民、組織、その他の状況を利用し、中華人民共和国の国家安全を危うくする場合にも適用されるものとする。

第五条 国は、反スパイ業務の調整機構を確立し、反スパイ業務の主要事項を統率し、スパイ防止活動の主要問題を研究し解決しなければならない。

第六条 国家安全機関は、反スパイ業務の主管機関とする。
公安、秘密保護および軍の関連部門は、職務分担に従い、緊密に協力し、連携を強化し、法律に従って関連業務を遂行するものとする。

第七条 中華人民共和国の公民は、国家の安全、名誉、利益を守る義務を負い、国家の安全、名誉、利益を危うくする行為をしてはならない。
すべての国家機関と軍隊、政党と各人民団体、企業事業組織及びその他の社会組織は、スパイ行為を防止・抑制し、国家の安全を守る義務を有する。
国家安全機関は、反スパイ業務において人民の支持を仰ぎ、人民を動員、組織してスパイ行為を防止・鎮圧しなければならない。

第八条 いかなる公民および団体も、法律に従って反スパイ業務を支持・援助し、知り得た国家機密および反スパイ業務の秘密を保持しなければならない。

第九条 国は、反スパイ業務を支援・援助する個人および団体を保護するものとする。
スパイ行為を通報し、または反スパイ活動に多大な貢献をした個人および組織は、国家の関連規定に従って表彰され、報奨を受ける。

第十条 外国の機関、組織、個人が実施又は指示、資金援助により他人が実施した、または国内の機関、組織、個人が外国の機関、組織、個人と共謀して行った中華人民共和国の国家安全に対するスパイ行為は、法律により訴追されなければならない。

第十一条 国家安全機関およびその職員は、その業務において、法律に厳格に基づき行動し、その権限を超え、または濫用してはならず、また個人および組織の合法的権益を侵害してはならない。
国家安全機関およびその職員が、法に基づき反スパイ業務の職務を遂行する際に入手した個人および組織の情報は、反スパイ業務にのみ使用することができる。国家機密、職務機密、商業機密および個人のプライバシーと個人情報に属する情報は、秘密が保持されるものとする。

第二章 セキュリティ対策

第十二条 国家機関、人民団体、企業事業組織およびその他の社会組織は、当該組織における反スパイセキュリティ対策業務の主な責任を負い、反スパイセキュリティ対策措置を実施し、当該組織の人員に国家の安全を守ることを教育し、当該組織の人員をスパイ行為防止および阻止に動員・組織化するものとする。
各級の地方人民政府、関連する業界主管部門は責任を分担し、行政区域、当該業界における反スパイセキュリティ対策業務を管理する。
国家安全機関は、法律に基づいて、反スパイセキュリティ対策業務を調整、指導、監督、検査する。

第十三条 各級人民政府および関連部門は、反スパイセキュリティ対策に関する広報・教育を組織・実施し、反スパイセキュリティ対策に関する知識を法律の普及に関する教育・訓練・広報に取り入れ、全人民の反スパイセキュリティ対策に関する意識と国家安全リテラシーを向上させるものとする。
報道、ラジオ、テレビ、文化、インターネット情報サービス組織は、地域社会に対して的を絞った反スパイ宣伝・教育を実施すべきである。
国家安全機関は、反スパイセキュリティ対策の状況に応じて、関連部門が反スパイ広報と教育活動を行うよう指導し、予防の意識と能力を高めるようにしなければならない。

第十四条 いかなる個人または組織も、国家機密である文書、データ、資料または物品を不正に取得し、または保有してはならない。

第十五条 いかなる個人または組織も、スパイ活動に特別に必要な特殊スパイ機器を違法に製造、販売、所持、使用してはならない。特殊なスパイ機器は、国務院の管轄する国家安全主管部門が、関連する国家規定に基づいて特定するものとする。

第十六条 スパイ行為を発見したいかなる公民または組織も、速やかに国家安全機関に通報しなければならない。公安機関等他の国家機関または組織に通報した場合、関連する国家機関または組織は、直ちに国家安全機関に転送して処理しなければならない。
国家安全機関は、通報を受けるための電話番号、メールボックス、ネットワークプラットフォームを社会に公開し、通報された情報を法律に従って適時に処理し、通報者の秘密を保持しなければならない。

第十七条 国は、反スパイセキュリティ対策のための重点組織管理制度を構築する。
反スパイセキュリティ対策重点組織は、反スパイセキュリティ対策業務のシステムを確立し、反スパイセキュリティ対策業務の要求を満たし、内部に設定された機能と人員を明確にして、反スパイセキュリティ対策の責任を負うものとする。

第十八条 反スパイセキュリティ対策重点組織は、職員に対し、反スパイセキュリティ対策の教育及び管理、職務を離れ、離職する職員が機密情報に接しなくなった期間における反スパイセキュリティ対策義務の進捗状況の監督と検査を強化しなければならない。

第十九条 反スパイセキュリティ対策重点組織は、閉鎖管理、警戒設置等の反スパイ物理的対策措置をとるために、機密事項、場所、キャリア等の日常のセキュリティ対策管理を強化しなければならない。

第二十条 反スパイセキュリティ対策重点組織は、反スパイ技術対策の要件と基準に従って、主要部門の部品、ネットワーク施設、情報システムの反スパイ技術対策を強化するために適切な技術的措置およびその他の必要な措置を講じるものとする。

第二十一条 国家の重要機関、国防軍工業組織、その他秘密に関わる重要組織、重要軍事施設周辺の安全管理区域内で新規建設プロジェクトを建設、変更、拡張する場合、国家安全機関は、国家安全事項に関わる建設プロジェクトの許可を実施するものとする。
県級以上の各級の地方人民政府は、国家経済社会発展計画、国土空間計画等のその他関連計画を作成する際に、国家安全保障要因と策定された安全管理区域を十分に考慮し、国家安全機関の意見を求めなければならない。
安全管理区域の策定は、開発と安全を調整し、科学と合理性、必要性の原則を守り、国家安全機関が発展改革、天然資源、住宅・都市農村開発、機密、国防科学技術産業等の部門、軍の関連部門と共同で策定し、中央政府直属の省、自治区、市人民政府に報告して承認と動態調整を受けなければなりません。
国家安全事項に関わる建設プロジェクトの許可に関する具体的な実施方法は、国務院の国家安全主管機関が関係部門と連携して制定するものとする。

第二十二条 国家安全機関は、反スパイ業務の必要性に応じて、関係部門と共同で、反スパイ技術予防措置の基準を策定し、関係部門に反スパイ技術予防措置の実施を指導し、危険性のある部門に対しては厳格な承認手続を行った後、反スパイ技術予防措置の検査・試験を実施することができる。

第三章 調査及び処分

第二十三条 国家安全機関は、反スパイ業務において、法律に従い、本法および関連法に規定された権限および機能を行使するものとする。

第二十四条 国家安全機関の職員は、法律に従って反スパイ業務の任務を遂行する場合、規定に従って業務証書を提示し、中国公民または中国国外にいる者の身分証明書を確認し、関係する個人および団体に関連情報を尋ねることができ、身元が不明でスパイの疑いがある者の随伴品を確認することができる。

第二十五条 国家安全機関の職員は、法に基づき反スパイ業務を遂行する場合、市級以上の国家安全機関の長の承認を得て、業務証書を提示し、関係する個人および組織の電子機器、設備、関連する手続きおよび道具を検査することができるものとする。検査の結果、国家安全保障を危うくする状況が判明した場合、国家安全機関は、直ちにその状況を是正する措置をとるよう命じなければならない。是正を拒否した場合、または是正後も国家安全保障を脅かす潜在的な危険がある場合、差押又は押収することができる。
前項の規定により、電子機器、設備および関連する手順・道具を差押または欧州した場合、国家安全機関は、国家の安全を脅かす状況が解消された後、速やかに差押または押収を解除しなければならない。

第二十六条 法律に基づき反スパイ業務を遂行する場合、国家安全機関の職員は、国家の関連規定に基づき、経済区の市級以上の国家安全機関の長の承認を得て、関連文書、データ、資料および物品を閲覧または回収することができ、関係する個人および組織はこれに協力しなければならない。閲覧及び検索は、反スパイ業務の遂行に必要な範囲及び制限を越えてはならない。

第二十七条 本法に違反した者を召喚して調査を受け入れる必要がある場合、国家安全機関の事件担当部門の責任者の承認を得て、召喚状を用いて召喚するものとする。本法に違反したことをその場で発見した者の場合、国家安全機関の職員は、規定に従って、業務証書を提示し、口頭で召喚することができるが、これは尋問の記録で示さなければならない。召喚の理由および根拠は、召喚された者に伝達されるものとする。正当な理由なく召喚を拒否し、又は召喚を忌避する者は、強制的に召喚されることがある。
国家安全機関は、召喚された者の市または県内の指定された場所、またはその者の住居で尋問を行うものとする。
国家安全機関は、召喚された者に対して、速やかに尋問および検証を行う。尋問と確認の時間は八時間を超えてはならない。状況が複雑で、行政拘留または犯罪の疑いがある場合は、尋問と確認の時間は二十四時間を超えてはならない。国家安全機関は、召喚された者に必要な食事と休息時間を提供しなければならない。連続的な召喚は厳禁である。
通知が不可能な場合、または捜査に支障をきたす場合を除き、国家安全機関は、召喚された者の家族に対し、速やかに召喚の理由を通知しなければならない。上記の状況がなくなった後、召喚された者の家族に直ちに通知しなければならない。

第二十八条 スパイ行為を調査する国家安全機関は、経済区の市級以上の国家安全機関の責任者の承認を得て、法に基づき、スパイ行為の疑いがある人身、物品、場所を検査することができる。
女性の身体の検査は、女性の職員が行うものとする。

第二十九条 スパイ行為を調査する国家安全機関は、経済区の市級以上の国家安全機関の責任者の承認を得て、スパイ行為の疑いがある者の財産に関する情報を照会することができる。

第三十条 スパイ行為を調査する国家安全機関は、経済区の市級以上の国家安全機関の責任者の承認を得て、法律に従い、スパイ行為に使用された疑いのある施設、設備または財産を差押、押収または凍結することができるが、調査中のスパイ行為と無関係な施設、設備または財産を差押、押収または凍結してはならない。

第三十一条 国家安全機関の職員が反スパイ業務において、接見、調査、召喚、検査、査問、差押、押収、凍結等の措置を取る場合、二人以上の者が、関連規定に従い業務証書及び法律文書を提示し、かつ関連する人員が、関連調書等書面資料上に署名捺印しなければならない。
国家安全機関の職員は、検査、差押、押収等の重要な証拠収集業務を行う際、全過程の進行を音声及び映像で記録し、査閲のために保管するものとする。

第三十二条 国家安全機関がスパイ行為に関する状況を調査・把握し、関連証拠を収集する場合、関係する個人・団体は事実に即してに提供しなければならず、拒否してはならない。

第三十三条 国務院国家安全主管部門は、出国後に国家の安全に害を及ぼし、または国家の利益に重大な損害を与える可能性がある中国公民を一定期間出国させてはならないと決定し、出入国管理機関に通知することができる。
スパイ行為容疑者の場合、省級以上の国家安全期間は、出国を拒否するよう出入国管理機関に通告することができる。

第三十四条 国務院国家安全主管部門は、入国後、中華人民共和国の国家安全を危うくする活動を行う可能性のある国外の者について、出入国管理機関に入国拒否を通告することができる。

第三十五条 国家安全期間が出国或いは入国を認めない者に対して、出入国管理機関が、国の関連規定に基づいて出入国拒否を執行し、出入国拒否の状況が消滅した場合、国家安全機関は速やかに出入国拒否の決定を取り消し、出入国管理機関に通知しなければならない。

第三十六条 国家安全機関は、スパイ行為によるネットワーク情報内容或いはネットワーク攻撃等のリスクを発見した場合、「中華人民共和国ネットワーク安全法」に規定された職責分担に従い、速やかに関連部門に通知し、法律に従って処分するか、または電気通信事業者およびインターネットサービスプロバイダに対し、速やかに抜け穴の修復、ネットワーク保護の強化、送信停止、プログラムおよびコンテンツの排除、関連する停止等の措置を講じるよう命令しなければならない。関連部門は、抜け穴の修復、ネットワーク保護の強化、送信停止、番組・コンテンツの削除、関連サービスの停止、関連アプリケーションの停止、関連ウェブサイトの閉鎖等の措置を講じ、関連記録を保存するものとする。状況が緊急であり、直ちに措置を講じなければ国家の安全に重大な損害を与える場合、国家安全期間は関連部門に抜け穴の修復、関連送信の停止、関連サービスの停止を命じ、関連部門に通知する。
関連措置を講じた後、当該情報の内容やリスクが解消された場合、国家安全機関および関連部門は、速やかに関連送信および関連サービスの再開を決定するものとする。

第三十七条 国家安全機関は、反スパイ業務の必要性から、国家の関連規定に基づき、厳格な承認手続きを経て、技術偵察措置および身分保護措置を講じることができる。

第三十八条 本法の規定に違反し、犯罪の疑いがある場合、関連事項が国家機密または情報に属するかどうかを鑑定し、危害の結果を評価する必要がある場合、国家機密保持部門または省、自治区、直轄市機密保持部門は手順に従って一定期間内に鑑定と組織評価を行う。

第三十九条 国家安全機関は、調査の結果、スパイ行為が犯罪の疑いがあると判断した場合、「中華人民共和国刑事訴訟法」の規定に従って、捜査のための立案を行う。

第四章 保護および監督

第四十条 国家安全機関の職員は、法律に従って職務を遂行し、法律により保護されるものとする。

第四十一条 国家安全機関は、法に基づきスパイ行為を調査し、郵便・速達等の物流事業者及び電気通信事業者、インターネットサービスプロバイダは、必要な支援・援助を提供する。

第四十二条 国家安全機関の職員は、緊急の職務を遂行する必要があるときは、業務証書を提示することにより、公共交通機関、優先通路およびその他の通路施設を優先的に利用することができる。

第四十三条 国家安全機関の職員は、法律に従って職務を遂行する場合、規定に従って業務証書を提示すれば、関連する場所および組織に入ることができ、国の関連規定に従って承認し業務証書を提示すれば、進入が制限されている関連区域、場所および組織に入ることができる。

第四十四条 国家安全機関は、反スパイ業務を行う必要がある場合、国家の関連規定に従って、国家機関、人民団体、企業事業組織及びその他の社会組織と個人の交通手段、通信手段、敷地及び建築物を反スパイ業務のために優先的に使用または徴用し、必要に応じて関連業務場及び施設・設備を設置し、業務終了後、規定に従って適時に返還または原状回復しなければならない。関連する費用は、規定に従って支払わなければならず、損失が生じた場合は補償しなければならない。

第四十五条 国家安全機関は、反スパイ業務の必要性から、国家の関連規定に基づいて、税関、出入国管理等の検査機関に対し、関連人員に通関の利便の為に、関連資料機材の検査を免除するよう要請できる。関係検査機関は、法律に従って援助を提供しなければならない。

第四十六条 国家安全機関の職員が職務を遂行することにより、または個人が反スパイ業務の遂行を援助することにより、本人または近親者の安全が脅かされる場合、国家安全機関は関係部門と連携し、法律に従い必要な措置を講じて、その保護および救助を行う。
個人が反スパイ業務を支援、援助した結果、本人または近親者の身の安全が危険にさらされた場合、国家安全機関に保護を要請することができる。 国家安全機関は、関連部門と連携して、法に基づく保護措置を講じるものとする。
個人及び組織が反スパイ業務を支援または援助した結果、財産上の損失を被った場合、国家の関連規定に従って補償される。

第四十七条 国は、反スパイ活動に貢献し、安定した処置を必要とする者に対し、適切な安定した処置を与えるものとする。
公安、民政、財政、衛生健康、教育、人材資源及び社会保障、退役軍人事務、医療保障、出入国管理等の関連部門および国有企業・機関は、国家安全機関の安定した処置を与える業務を支援しなければならない。

第四十八条 反スパイ業務を遂行し、または支援・援助した結果、障害を負い、または死亡した者は、国の関連規定に基づき、適切な慈悲と優遇を与えるものとする。

第四十九条 国は、反スパイの分野における科学技術の革新を奨励し、反スパイ業務における科学技術の役割を発揮させるものとする。

第五十条 国家安全機関は、反スパイ要員の専門部隊の構築と専門訓練を強化し、反スパイ業務の能力を向上させなければならない。
国家安全機関の職員に対して、政治的、理論的、及び業務的訓練を計画的に実施するものとする。訓練は、理論と実践を結びつけ、需要に合わせて教え、実践的な成果を求めることを重視し、専門的能力を向上させるものとする。

第五十一条 国家安全機関は、内部監督及び安全審査制度を厳格に実施し、職員の法律及び規律等の遵守を監督し、法律に基づき、定期又は不定期に安全審査を実施するために必要な措置を講じなければならない。

第五十二条 いかなる個人または団体も、国家安全機関およびその職員が権限を超過し、権限を濫用し、その他の違法行為を行った場合、上位の国家安全機関または監督機関、人民検察院およびその他の関連部門に告発または告訴する権利を有する。告発や告訴を受けた国家安全機関、監督機関、人民検察院およびその他の関連部門は、速やかに事実を調査し、法律に従って処理し、その結果を速やかに告発申立人および告訴人に知らせなければならない。
いかなる個人または組織も、国家安全機関の業務を支持または援助し、または法律に従って告発・告訴する個人または組織に対して、弾圧または報復してはならない。

第五章 法的責任

第五十三条 スパイ行為が実施され、犯罪を構成する場合、刑事責任は、法律に従って追及されるものとする。

第五十四条 個人がスパイ行為を行ったが、犯罪を構成していない場合、国家安全機関は警告を発するか、十五日以内の行政拘留を行い、単独または追加で五万元以下の罰金を科し、違法所得が五万元以上の場合、単独または追加で違法所得の倍以上五倍以下の罰金を科し、法律に基づいて関連部門が処罰することができる。
他人がスパイ行為を行ったことを知りながら、情報、資金、物資、労力、技術、敷地その他の支援・援助を提供し、または隠匿、匿い、犯罪を構成していない場合は、前項の規定に従って処罰されるものとする。
組織が前二項の行為を行った場合、国家安全機関は警告を発し、単独または追加で五十万元以下の罰金を科し、違法所得が五十万元以上の場合、単独または追加で違法所得の倍以上五倍以下の罰金を科し、責任者及びその他の直接責任者を第一項の規定に基づいて処罰する。
関連組織または担当者の法律違反の状況および結果によって、国家安全機関は関係主管部門に対して、法律に基づいて関連事業の停止、関連サービスの提供または生産・営業の停止、関連免許の取消または登録の取消を命じるよう勧告できる。関係主管部門は、行った行政処理について、国家安全機関に適時にフィードバックしなければならない。

第五十五条 スパイ行為を行った者が自首し、または功績のある行為を行った場合、刑罰を柔和、軽減または免除することができ、著しい功績のある行為を行った場合、報奨を与えることができる。
国外において強要または誘導されてスパイ組織または敵対組織に加入し、中華人民共和国の国家安全を危うくする活動に従事した者が、外国にある中華人民共和国の機関に適時にかつ事実に即して状況を説明し、または入国後に直接またはちょぞく組織を通じて国家安全機関に適時にかつ事実に即して状況を説明して悔悟を示した場合、訴追しないことができる。

第五十六条 国家機関、人民団体、企業事業組織およびその他の社会組織が本法の規定に従って反スパイセキュリティ対策義務を履行しない場合、国家安全機関は是正を命じることができる。是正が要求に従って行われない場合、国家安全機関は関連する責任者に事情聴取し、必要に応じて、その組織の上級主管部門に通報できる。有害な結果または悪影響が生じる場合、国家安全機関は、警告し、問題を通告することができる。状況が深刻である場合、責任者及び直接の責任者は、法律に基づいて関係当局に処罰されるものとする。

第五十七条 本法第二十一条の規定に違反して新築、改造、増築した場合、国家安全機関は是正を命じ、警告を与え、是正を拒否した場合、または状況が深刻な場合、建設または使用の停止を命じ、許可を停止または取り消し、または関係主管機関に法律に基づいて処理するよう勧告しなければならない。

第五十八条 本法第四十一条の規定に違反した場合、国家安全機関は是正を命じ、警告または問題を通告する。是正を拒否した場合、または状況が深刻な場合、関係主管部門は関連法規に基づき処罰する。

第五十九条 本法の規定に違反してデータ取調への協力を拒否した場合、国家安全機関は「中華人民共和国データ安全法」の関連規定に基づいて処罰する。

第六十条 本法の規定に違反して、以下の犯罪を構成する行為を行った者は、法律に従って刑事責任を負う。その行為がまだ犯罪を構成しない場合、国家安全機関は警告を発するか十日以内の行政拘留を課し、三万元以下の罰金を科すことができる
(一)反スパイ業務に関する国家機密を漏洩する行為。
(二)国家安全機関が関連情報を調査し、または関連証拠を収集する際に、スパイ犯罪を犯した者と知りながら、情報の提供または証拠の収集を拒否すること。
(三)国家安全機関が法に基づき職務を遂行することを意図的に妨害すること。
(四)国家安全機関が法に基づき差押、押収、凍結した財産を隠匿、譲渡、転売、破壊すること。
(五)スパイ行為に関与する財産を、その財産であることを知りながら、隠匿、譲渡、取得、代理販売、その他偽装、隠蔽すること。
(六)法律に基づき、国家安全機関の業務を支援または援助する個人および組織に対する報復。

第六十一条 国家秘密に属する文書、データ、資料または物品の不法取得または所持、および特殊スパイ機器の不法製造、販売、所持または使用がまだ犯罪を構成しない場合、国家安全機関は警告を発し、または十日以内の行政拘留を科すものとする。

第六十二条 国家安全機関は、本法に基づき差押、押収または凍結された財産を適切に保管し、以下の状況に応じて個別に処理しなければならない
(一)犯罪が疑われる場合、「中華人民共和国刑事訴訟法」およびその他の関連法律の規定に従って処理する
(二)まだ犯罪を構成していない場合で、違法な事実がある場合は、法令に基づき没収すべきものは没収し、法令に基づき廃棄すべきものは廃棄する
(三)違法な事実がない場合又は事件と関係ない場合は、差押、押収又は凍結を解除し、当該財産を速やかに返還し、損害が生じた場合は、法令に基づき賠償するものとする。

第六十三条 事件に関係する財産が次の各号の一に該当する場合は、法令に基づき回収もしくは没収し、または隠れた危険を除去するための措置を講じなければならない
(一)スパイ行為を行う為の本人の財産と同様に、法令に違反して得た財産及びその果実並びに収益。
(二)不法に入手し、または保有する国家秘密に属する文書、データ、資料および物品。
(三)違法に製造、販売、所持または使用された特殊なスパイ機器。

第六十四条 行為者及びその近親者或いは関係者が、行為者のスパイ行為の実施においてスパイ組織或いはその代理人が取得したすべての利益は、法律に従って国家保安機関により回収または没収等の措置をとる。

第六十五条 国家安全機関が法律に従って回収した罰金および没収した財産は、すべて国庫に納付する。

第六十六条 国外の者が本法に違反した場合、国務院国家安全主管部門は、期間を限定して出国することを決定し、入国を許可しない期間を決定することができる。定められた期間内に出国しない者は、国外退去させることができる。
国務院国家安全主管部門が本法に違反した在外者の国外退去を決定した場合、その者は退去の日から十年間入国できないものとし、国務院国家安全主管部門の処罰に関する決定を最終決定とする。

第六十七条 国家安全機関は、行政処分の決定を行う前に、発出する行政処分の内容及びその事実、理由、根拠、並びに関係者が法律に従って陳述、弁論及び聴聞を求める権利を関係者に知らせ、「中華人民共和国行政処罰法」の関連規定に従って決定を実施しなければならない。

第六十八条 当事者は、行政処罰に関する決定、行政強制措置に関する決定、行政許可に関する決定に不服がある場合、決定書を受領した日から六十日以内に、法律に基づき再審議を申請することができ、再審議に関する決定に不服がある場合、再審議に関する決定書を受領した日から十五日以内に、法律に基づき人民法院に提訴することができる。

第六十九条 国家安全機関の職員が、権限を濫用し、職務を怠り、私服を肥やす行為を行い、または違法な拘束、拷問による自白強要、暴力による証拠取得、規定に違反して国家機密、業務機密、商業機密および個人のプライバシーまたは個人情報を開示する行為は、法律に従って処罰され、犯罪を構成する場合は、法律に従って刑事責任が追及される。

第六章 附則

第七十条 国家安全機関が法律、行政法規および国家の関連規定に基づいて、スパイ行為以外の国家安全に反する行為を防止、抑制および処罰する職務を遂行する場合にも、本法の関連規定が適用される。
公安機関が法律に従って職務を遂行する過程で、国家の安全を脅かす行為を発見し、処罰する場合にも本法の関連規定が適用される。

第七十一条 この法律は、2023年7月1日から施行する。

(中国語原文)

http//www.gov.cn/yaowen/2023-04/27/content_5753385.htm