この日本語試訳は中国語文献理解の補助とするために無償で公開しているものです。厳密な解釈・理解は、必ず中国語原文を確認願います。
なぜ移転価格調査は長期間を要するか?
北京税務 北京市税務局第三税務分局 2020年9月15日
移転価格調査において注目されているのは、多額のクロスボーダー関連者間取引を行っている多国籍企業であり、調査立案の原因は主に利益水準が低さ或いは一部の関連者間取引の価格設定の不合理です。移転価格調査は立案から終了まで通常1年、2年かかり、場合によっては、さらに時間を要することもあります。
一、なぜ移転価格調査は長期間を要するか?
1.関連者間取引利益水準の検討
一つの企業において二つ以上の種類のクロスボーダー関連者間取引がある場合、通常、企業は取引種類別に各費用を集計していないため、各関連者間取引の利益水準を検討する際に、費用を按分する必要があります。時として、関連者間取引と非関連者間取引の間でも費用按分の必要があります。合理的な費用按分方法を探すために、比較的長い時間がかかります。
2.企業機能リスク変化の分析
機能リスクは企業が得るべき利益水準を判断する主要な要素です。通常、機能リスクが高い企業は比較的高い利益水準を得るため、企業の機能リスクを確定させることが非常に重要であると考えています。
一点目に、我々が証拠を集めるべき調査対象期間は、すでに数年若しくは十数年前になりますので、証拠収集と論証の過程は比較的長い時間を要します。また、調査期間における重要な調整があった企業、例えば合併、分割、あるいは業務の重大な調整による機能リスクの変化に対しては、さらに時間を要します。
二点目に、証拠収集と論証は、税務機関による一方的な確認ではなく、企業のフィードバックを聞き、企業の資料補足提出も受け、さらに、企業の海外関連企業から一部の資料を取り寄せることもあります。
三点目に、企業が資料を提供する過程において、慎重性に考慮するため、企業自身による確認、企業グループによる確認及び外部より招聘した仲介事務所による確認を受けることになり、全体的に時間がいっそうかかります。
四点目に、一部の業界や一部のタイプの企業に対しては、サプライチェーンの観点から企業の機能リスクを分析し、評価する必要があります。この場合、当該企業が位置するビジネスチェーンに係るすべての情報や関連財務データを把握し、業界分析も行うため、これも長いプロセスになります。
3.調整方法と比較対象企業に係るコミュニケーション
税務機関と企業は、企業の機能リスクに対して基本的に合意した後、移転価格課税調整の方法と比較対象企業の確定に係る議論を始めます。調整方法の選択においては、各移転価格方法の適用性を考慮する以外に、データを取得する可能性と信頼性も考慮する必要があります。そして、比較対象企業の選択過程においては、比較対象企業が現実的に分析対象企業と比較できず、しかもその利益水準の差が非常に大きいため、税務機関と企業は繰り返しコミュニケーションすることになります。
4.後続審査承認プロセス
上述の基礎作業が完了後、一部の審査承認プロセスも完了させる必要があります。課税調整金額が比較的大きい案件については、省レベルで専門家による合同審査を開催し、その後、国家税務総局専門家による合同審査もあります。これらの専門家が案件に対して質疑を提起した場合、案件はもとに差し戻され、補正も必要となりますので、これらのプロセスも一定の時間がかかります。
二、どのように移転価格調査時間を有効に短縮するか?
一点目として、企業は専門的対応部門または対応担当者を手配し、機能リスクの確認と関連資料の取得を順調に実現できるよう、税務機関と協力します。
二点目として、企業グループの協力支援を得て、調査業務の順調な進展を促します。
三点目として、企業は専門の仲介事務所を選び、調査対応業務に協力させることができます。
四点目として、クロスボーダー関連者間取引の金額が比較的大きい企業は、将来年度の移転価格問題に確実性を提供するために、事前確認協議を税務機関と相談し締結することができます。
出典:北京市税務局第三税務分局
(中国語原文)
https://mp.weixin.qq.com/s/4yZeMFGCjddB2PEaER8Ddg