200701_中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法(日本語試訳)

この日本語試訳は中国語文献理解の補助とするために無償で公開しているものです。厳密な解釈・理解は、必ず中国語原文を確認願います。

中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持法

(中国語原文)中华人民共和国香港特别行政区维护国家安全法

(2020年6月30日に第13回全国人民代表大会常務委員会の第20回会議にて採択)

目次

第一章 総則

第二章 香港特別行政区が国家安全を維持する職責と機構

第一節 職責

第二節 機構

第三章 罪と罰則

第一節 国家分裂罪

第二節 国家政権転覆罪

第三節 テロ活動罪

第四節 外国又は国外勢力と結託して国家の安全を脅かす罪

第五節 その他の処罰規定

第六節 効力範囲

第四章 案件の管轄、法律適用及び手続

第五章 在香港特別行政区中央人民政府国家安全維持機構

第六章 附則

第一章 総則

第1条 「一国二制度」「港人治港(香港市民が香港を統治する)」、高度な自治方針を堅実に不変に全面的正確に実行し、国家安全を維持し、香港特別行政区に関連する国家の分裂、国家政権の転覆、テロ活動の組織実施及び外国又は国外勢力と結託し国家安全を脅かすこと等の犯罪を防止し、取締り、処罰し、香港特別行政区の繁栄と安定を維持し、香港特別行政区市民の合法的な権益を保障するために、中華人民共和国憲法、中華人民共和国香港特別行政区基本法及び全国人民代表大会の国家安全を維持するための香港特別行政区の健全な法律制度と執行機構の決定に基づいて、本法が制定される。

第2条 香港特別行政区の法的な地位に係る香港特別行政区基本法第1条及び第12条の規定は、香港特別行政区基本法の根本的な条項である。香港特別行政区におけるいかなる機構、組織及び個人も、香港特別行政区基本法第1条及び第12条の規定に反して、権利及び自由を行使してはならない。

第3条 中央人民政府は、香港特別行政区の国家安全事項に関して根本的な責任を負う。

香港特別行政区は、国家安全を維持するという憲法上の責任を有し、国家安全を維持する義務を履行しなければならない。

香港特別行政区の行政機関、立法機関及び司法機関は、本法及びその他の関連法律に従い、国家の安全を脅かす行為や活動を効果的に防止し、取締り、処罰する。

第4条 香港特別行政区は国家安全を維持し、人権を尊重し保障するとともに、香港特別行政区基本法と『公民権及び政治的権利の国際規約』、『経済、社会及び文化的権利の国際規約』に基づく香港の関連規定が言論・報道・出版の自由を含み、結社・集会・行進・デモの自由を含む香港特別行政区市民の権利と自由を有することを保護する。

第5条 国家の安全に対する犯罪を防止し、取締り、処罰するには、法治原則を堅持しなければならない。法律により犯罪行為と規定されている場合、法律によって処罰される。法律により犯罪行為と規定されていない場合、処罰されない。

司法当局から有罪判決を受けるまでは、無罪と推定される。犯罪容疑者、被告人及びその他の訴訟参加者が法律に基づいて弁護権及びその他の訴訟上の権利を享受することは保護される。いかなる者も、司法手続きを経て、有罪もしくは無罪判決を最終的に確定された場合、同一行為に対して再裁判もしくは処罰されない。

第6条 国家の主権、統一及び領土の保全の維持は、香港の同胞を含む全中国人民の共通義務である。

香港特別行政区においていかなる機構、組織及び個人も、本法及び国家安全の維持に係る香港特別行政区の法律を遵守しなければならず、また、国家安全を脅かす行為や活動に従事してはならない。

香港特別行政区市民は、選挙に立候補し、あるいは公職に就く際に、法律に基づき、香港特別行政区基本法を遵守することを確認し、あるいは宣誓する文書に署名し、中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を誓う。

第二章 香港特別行政区が国家安全を維持する職責と機構

第一節 職責

第7条 香港特別行政区は、香港特別行政区基本法に規定されている国家安全の維持に係る立法を早急に完成させ、関連法律を整備しなければならない。

第8条 香港特別行政区の法律執行及び司法機関は、本法及び香港特別行政区の現行法律に関連する国家安全を脅かす行為や活動を予防し、取締り、処罰するための規則により、国家安全を効果的に維持する。

第9条 香港特別行政区は、国家の安全を維持し、テロ活動の遂行を防止しなければならない。 学校、社会団体、メディア、インターネット等の国家安全に及ぼす事項について、香港特別行政区政府は必要な措置を講じ、宣伝、指導、監督、管理を強化しなければならない。

第10条 香港特別行政区は、香港特別行政区市民の国家安全意識及び法律遵守意識を高めるために、学校、社会団体、メディア、インターネット等を通じた国家安全教育を推進しなければならない。

第11条 香港特別行政区行政長官は、香港特別行政区の国家安全の維持に関して中央人民政府に対して責任を負い、また、香港特別行政区が国家安全の維持を履行する職責の状況について年次報告書を提出しなければならない。

中央人民政府の要請があった場合、行政長官は国家安全の維持に係る特定事項について適時に報告しなければならない。

第二節 機構

第12条 香港特別行政区は、国家安全維持委員会を設置する。委員会は香港特別行政区の国家安全を維持する事務の責任を負い、国家安全を維持する主な責任を担い、中央人民政府による監督と説明責任を受ける。

第13条 香港特別行政区国家安全維持委員会は、行政長官を委員長とし、政務司長、財政司長、律政司長、保安局局長、警務処処長及び本法第16条にて規定される国家安全維持部門の責任者、入境事務処処長、税関長、行政長官事務室主任をメンバーとする。

香港特別行政区国家安全維持委員会の下に秘書処を置き、秘書長が指揮する。秘書長は行政長官に提案され、中央人民政府に報告し任命される。

第14条 香港特別行政区国家安全維持委員会の職責は次の通りである。

(一)  国家安全維持上の香港特別行政区の状況を分析し判断し、関連業務を計画し、香港特別行政区の国家安全維持政策を制定する。

(二)  香港特別行政区の国家安全を維持するため、法律制度と執行機構の確立を推進する。

(三)  国家安全を維持するため、香港特別行政区の主要業務と主要行動を調整する。

香港特別行政区国家安全維持委員会は、香港特別行政区内の他のいかなる機構、組織、個人による干渉を受けず、業務に係る情報を公表しない。香港特別行政区国家安全維持委員会の決定は、司法審査の対象とならない。

第15条 香港特別行政区国家安全維持委員会は、中央人民政府が指定した国家安全事務顧問を設置し、香港特別行政区国家安全維持委員会の事務の履行に係る事項について意見を提供する。国家安全事務顧問は、香港特別行政区国家安全維持委員会の会議に出席する。

第16条 香港特別行政区警務処は、国家安全維持のために法律執行能力を備える部門を設置する。

警務処国家安全維持部門の責任者は、行政長官が任命し、任命の前に行政長官は本法第48条の規定する機構の意見を書面で求める必要がある。警務処国家安全維持部門の責任者は、職務に就く際、中華人民共和国香港特別行政区基本法を守ることを宣誓し、中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を誓い、法律を遵守し、秘密を保持しなければならない。

警務処国家安全維持部門は、香港特別行政区の外から合格する専門家や技術者を雇い、国家安全維持の関連任務の執行を支援することができる。

第17条 警務処国家安全維持部門の職務は、次の通りである。

(一) 国家の安全に係る情報の収集及び分析を行う。

(二) 国家の安全を維持するため、措置及び行動を展開し、協調し、推進する。

(三) 国家の安全を脅かす犯罪案件を調査する。

(四) 反干渉調査を行い、国家安全の審査を展開する。

(五) 香港特別行政区国家安全維持委員会から委託された国家安全の維持のための業務を引き受ける。

(六)  本法の執行に必要な他の業務を実施する。

第18条 香港特別行政区律政司は、国家安全に対する犯罪案件の検察業務及びその他関連する法律事務の責任を負う専門の国家安全犯罪案件検察部門を設置する。当該部門の検察官は、香港特別行政区国家安全維持委員会の同意を得て、律政司長が任命する。

律政司国家安全犯罪案件検察部門の責任者は、行政長官が任命し、任命の前に行政長官は書面で本法第48条に規定する機構の意見を求める。律政司国家安全犯罪案件検察部門の責任者は、職務に就く際、中華人民共和国香港特別行政区基本法を守ることを宣誓し、中華人民共和国香港特別行政区に忠誠を誓い、法律を遵守し、秘密を保持しなければならない。

第19条 香港特別行政区政府の財政司長は、行政長官の承認を得て、国家安全の維持の支出を政府の一般歳入から専門資金を支出し、関係する人員を編成しなければならず、香港特別行政区の現行の関連法律規定により制限されない。財政司長は、当該支出のコントロール及び管理につき、立法会へ報告書を提出しなければならない。

 第三章 罪と罰則

 第一節 国家分裂罪

第20条 いかなる者も、国家を分裂させ、国家の統一を破壊することを目的として、次に掲げる行為を組織し、計画し、実行し、又はその実行に関与した場合、武力の行使又は武力による威嚇の有無にかかわらず、罪に問われる。

(一) 香港特別行政区又は中華人民共和国のその他の部分を中華人民共和国から分離する。

(二)  香港特別行政区又は中華人民共和国のその他の地域の法的地位を不法に変更する。

(三)  香港特別行政区又は中華人民共和国のその他の部分を外国の支配下に移す。

前款の罪を実行した者のうち、首謀者あるいは罪が重大な者は、無期懲役又は十年以上の有期懲役に処する。積極的に関与した者は、三年以上十年以下の有期懲役に処する。それ以外の参加した者は、三年以下の有期懲役、禁錮あるいは管制に処する。

第21条 いかなる者も、他人を扇動し、協力し、教唆し、又は金銭あるいはその他財物により資金を援助し、本法第20条に規定される罪を実行させた場合、罪に問われる。事情が重大な場合、五年以上十年以下の有期懲役に処する。事情が軽微な場合、五年以下の有期懲役、禁錮又は管制に処する。

第二節 国家政権転覆罪

第22条 いかなる者も、武力、脅迫又はその他の不法な手段によって国家政権を破壊することを目的とする次に掲げる行為を組織し、計画し、実行し、又はこれに関与した場合、罪に問われる。

(一)  中華人民共和国憲法に定める中華人民共和国の基本的な制度を転覆し又は破壊する。

(二) 中華人民共和国又は香港特別行政区の政権を転覆させる。

(三)  中華人民共和国の中央政権機関又は香港特別行政区の政権機関の法律に基づく職能の履行を著しく妨害し、阻害し、又は破壊する。

(四)  香港特別行政区の政権機関が、その職能を履行する場所や施設を攻撃したり、損傷させたりして、その職能の履行を不能にする。

前款の罪を犯した者のうち、主要人物あるいは罪が重大な者は、無期懲役又は十年以上の有期懲役に処する。積極的に関与した者は、三年以上十年以下の有期懲役に処する。それ以外の参加した者は、三年以下の有期懲役、禁錮あるいは管制に処する。

第23条 いかなる者も、他人を扇動し、協力し、教唆し、又は金銭あるいはその他財物によって資金援助して、本法第二十二条に規定される罪を実行させた場合、罪に問われる。 事情が重大な場合には、五年以上十年以下の有期懲役に処する。事情が軽微な場合、五年以下の有期懲役、禁錮又は管制に処する。

 第三節 テロ活動罪

第24条 中央人民政府、香港特別行政区政府又は国際組織を脅迫する、あるいは公衆を威嚇するために、政治的な主張を実現させる目的で、次に掲げるいずれかの社会に重大な被害をもたらす、又はもたらすことを意図したテロ行為を組織し、計画し、実行し、実行に関与し、又は威嚇に関与した場合、罪に問われる。

(一) 人に対する重大な暴力。

(二) 爆発、放火、又は毒性、放射性、感染症病原体を含む物質の放出。

(三) 交通機器、交通設備、電力設備、ガス設備、その他可燃性爆発性の設備の破壊。

(四) 水、電気、ガス、交通、通信、ネットワーク等の公共サービス及びこれを管理する電子制御システムを著しく妨害し、破壊する。

(五) その他危険な手段により公衆衛生又は安全を著しく脅かす。

前款の罪を犯し、人に重症を負わせ、死亡させ、又は公私の財産を著しく損失を与えた場合、無期懲役又は十年以上の有期懲役に処する。他の場合、三年以上十年以下の有期懲役に処する。

第25条 テロ活動を組織し、又は指導した者は罪に問われ、無期又は十年以上の懲役に処し、財産の没収に処する。積極的に参加した者は、三年以上十年以下の有期懲役及び罰金刑に処する。それ以外の参加者は三年以下の有期懲役、禁錮又は管制に処し、並びに罰金刑に処することもできる。

本法で指すテロ組織とは、本法第24条に規定するテロ犯罪の実行または実行を意図し、あるいは本法第24条に規定するテロ犯罪に関与又は協力を実行する組織をいう。

第26条 テロ組織、テロ人員に対して、テロ活動を実行するための訓練、武器、情報、資金、物資、役務、運送、技術又は場所等を提供し、支持し、協力し、便宜を図り、又は爆発性、毒性、放射性、感染症病原体等を含む物質を製造し、不法に所有し、その他の形式でテロ活動の実行準備を行う場合、罪に問われる。事情が重大な場合、五年以上十年以下の有期懲役及び罰金、又は財産の没収に処する。それ以外の場合、五年以下の有期懲役、禁錮又は管制に処し、並びに罰金刑に処する。

前款の行為と同時に、他の罪も犯した場合、より重い刑罰で有罪判決とし処罰される。

第27条 テロを宣伝し、又はテロ行為の実行を扇動した場合、罪に問われる。事情が重大な場合、五年以上十年以下の有期懲役及び罰金、又は財産の没収に処する。それ以外の場合、五年以下の有期懲役、禁錮又は管制に処し、並びに罰金刑に処する。

第28条 本節の規定は、香港特別行政区の法律に基づく他の形式によるテロ活動犯罪に対する刑事責任の追及や財産の凍結等の措置に影響を与えない。

第四節 外国又は国外勢力と結託して国家の安全を脅かす罪

第29条 外国若しくは国外の機構、組織若しくは人員のため、国家安全に係る国家機密や情報を盗み、探り、買収し、不法提供する、又は、外国若しくは国外の機関、組織若しくは人員に実行を依頼したり、外国若しくは国外の機関、組織若しくは人員と実行を共謀したり、あるいは外国若しくは国外の機関、組織若しくは人員から、直接又は間接に指示、管理、資金援助又はその他の支援を受け、次に掲げるいずれかの行為を実行する場合、罪に問われる。

(一)  中華人民共和国に対して戦争を発動し、又は武力又は武力による威嚇により、中華人民共和国の主権、統一及び領土の完全性に対して重大な危害をもたらす。

(二)  香港特別行政区政府又は中央人民政府による法律や政策の策定や執行を著しく妨害し、深刻な結果をもたらす可能性がある場合。

(三)  香港特別行政区の選挙を操作したり、妨害したりする行為で、深刻な結果をもたらす可能性がある場合。

(四)  香港特別行政区又は中華人民共和国に対して、制裁、封鎖又はその他の敵対的行為を行う。

(五)  各不法な手段を用いて、中央人民政府又は香港特別行政区政府に対する香港特別行政区市民の憎悪を煽り、深刻な結果をもたらす可能性がある場合。

前款の罪を犯した者は、三年以上十年以下の有期懲役に処する。罪が重大な場合、無期懲役又は十年以上の有期懲役に処する。

本条第一項の規定に関連する国外の機構、組織又は人員は、共犯者とし、罪に問われ、刑罰に処する。

第30条 本法第20条及び第22条に規定する罪を実行するために、外国又は国外の機構、組織若しくは人員と共謀し、又は外国又は国外の機構、組織、人員からの指示、管理、資金援助、その他の形態の支援を、直接又は間接的に受け入れる者の処罰は、本法第20条及び第22条の規定に基づき、より重い処罰が適用される。

第五節 その他の処罰規定

第31条 会社、団体等の法人又は非法人組織が、本法に規定する罪を実行した時、その組織に対し、罰金刑を科する。

会社、団体等の法人又は非法人組織が、本法に規定する罪を犯し刑事罰を受けた場合、その運営の停止を命じられ、又はその免許又は営業許可証を取り消さなければならない。

第32条 本法に規定する罪を実行したことで得た資金援助、利益、報酬等の違法所得及び犯罪に使用され、又は使用しようとされた資金と道具については、追徴され、没収されなければならない。

第33条 次のような事情がある場合、犯罪者、犯罪容疑者又は被告人は、処罰を減刑できる。犯罪が軽い場合、処罰を免除する。

(一)  犯罪過程において、自ら犯罪を放棄し、又は自ら犯罪結果の発生を効果的に防いだ。

(二)  自発的に警察に自首し、自分の犯罪行為を正しく自白した。

(三)  他人の犯罪行為の事実を告発し、その事実が検証された場合、又は他の案件を捜査解明するのに重要な手がかりを提供した場合。

強制措置の対象となった犯罪容疑者、被告人が、法律執行又は司法機関が把握していない本人が犯した本法に規定される他の犯罪行為をありのままに供述した場合、前款第二項に基づき処理する。

第34条 香港特別行政区永住権を有しない者につき、本法に規定される犯罪を実行した場合、国外への強制追放を独立的に、また付随的に適用できる。

香港特別行政区永住権を有しない者につき、本法に規定される犯罪を犯し、いかなる原因で刑事責任を問わなくても、国外への強制追放ができる。

第35条 国家安全を脅かす罪で裁判所から有罪判決を受けたいかなる者も、香港特別行政区で行われる立法会、区議会選挙に候補者として参加する資格を失い、又は香港特別行政区の公職又は香港特別行政区の行政長官選挙委員会の委員に就く資格を失う。 かつて中華人民共和国香港特別行政区基本法の遵守を宣誓又は宣言し、中華人民共和国香港特別行政区への忠誠を誓った立法会議員、政府職員及び公務員、行政会議のメンバー、裁判官及び他の司法者、区議員は、即時にその職を失い、又は上述した職務に立候補し、職務に就く資格を失う。

前款の規定による資格或いは職務の喪失は、その選挙又は公職任免に関する組織、管理を担当する機関が発表し交付する。

第六節 効力範囲

第36条 本法は、香港特別行政区内で本法に規定する犯罪を実行したいかなる者に適用される。犯罪の行為あるいはその結果の一つが香港特別行政区内であった場合、香港特別行政区内での犯罪とみなされる。

本法は、香港特別行政区で登録された船舶又は航空機内で、本法に規定する犯罪を実行した場合も、適用される。

第37条 香港特別行政区永住権を有する市民又は香港特別行政区に設立された会社、組織等の法人、あるいは非法人組織が、香港特別行政区の外で本法に規定する犯罪を実行した場合、本法が適用される。

第38条  香港特別行政区永住権を有しない者が、香港特別行政区の外で香港特別行政区に対して本法に規定される犯罪を実行した場合、本法が適用される。

第39条 本法施行後にあった行為は、本法が適用され、罪に問われ処罰される。

第四章 案件の管轄、法律適用及び手続

第40条 香港特別行政区は、本法に規定する犯罪に対して管轄権を行使する。ただし、本法第55条に規定する場合を除く。

第41条 香港特別行政区が国家安全を脅かす犯罪案件に係る立案調査、起訴、裁判、刑罰等の執行等の訴訟手続き事項を管轄し、本法及び香港特別行政区の法律が適用される。

律政司長の書面同意がなければ、いかなる者も国家安全を脅かす犯罪案件を起訴してはならない。ただし、この規定は、法律に基づく当該犯罪に係る犯罪容疑者の逮捕及び禁錮、並びに当該犯罪容疑者の保釈の申請に影響を与えない。

香港特別行政区が管轄する国家安全を脅かす犯罪案件の裁判は、公訴手続きにて行われる。

裁判は公開されなければならない。なお、国家機密、公共秩序等に関して公開裁判が不適切な場合、裁判の審理過程の全部又は一部を報道機関及び公衆は傍聴することを禁止する。ただし、判決結果は一律公開されなければならない。

第42条 香港特別行政区の法律執行及び司法機関は、香港特別行政区において施行されている禁錮、審理期限等に係る法律の規定を適用する時、国家安全を脅かす犯罪案件を公正かつ適時に処理することを確保し、国家安全犯罪を効果的に防止し、抑圧し、処罰されなければならない。

犯罪容疑者、被告人に対して、国家安全を脅かす行為を継続しないと裁判官が信じえる十分な理由がない限り、保釈は認められない。

第43条 香港特別行政区政府警務処は国家安全部門を維持し、国家安全犯罪事件を処理する際、香港特別行政区の現行法律にて警察などの法律執行部門が重大犯罪事件を調査する時に取った各種措置の使用を認める。また、次に掲げる措置を講じることができる。

(一)  犯罪の証拠が存在する可能性のある場所、車両、船舶、航空機及びその他の関連する場所及び電子設備を捜索する。

(二)  国家の安全を脅かす犯罪行為を行った疑いのある者の渡航書類の引き渡しを要求し、又は出国を制限する。

(三)  犯罪の実行に使用され、又は使用しようとした財産、犯罪所得による収益等の犯罪に係る財産に対して、凍結、差止命令、差押命令、没収命令及び押収命令を行う。

(四)  情報配信者又は関連サービス業者に対して、情報の削除又は協力を要求する。

(五)  外国及び国外の政治性組織、外国及び国外の当局又は政治組織の代理人に資料の提供を要求する。

(六)  行政長官の承認を得て、合理的な理由をもって国家安全犯罪の実行に関与していると疑われる者の通信傍受及び秘密監視を行う。

(七)  調査に係る情報や資料を所持し、又は管理していると合理的に疑われる者に、質問に答え、情報や資料を提出するよう要求する。

香港特別行政区国家安全維持委員会は、警務処国家安全維持部門等の法律執行機関に対し、本条第一項の規定に基づき監督責任を負う。

本条第一項の規定措置の実施細則を策定する権限を、香港特別行政区行政長官と香港特別行政区国家安全維持委員会に与える。

第44条 国家安全を脅かす犯罪案件に対処する責任者とし、香港特別行政区の行政長官は、裁判官、区域裁判所裁判官、高等裁判所第一審法廷裁判官、控訴法廷裁判官、終審裁判所裁判官のうちから、若干名の裁判官を指定しなければならず、あるいは暫定委員会若しくは特別委員会裁判官のうちから、若干名の裁判官を指定できる。行政長官は、裁判官を指定する前に、香港特別行政区国家安全維持委員会及び終審裁判所の首席裁判官の意見を求めることができる。また、上記指定裁判官の任期は一年とする。

国家安全を脅かすような言動をした者は、国家安全を脅かす犯罪案件を審理する裁判官に指定されてはならない。指定裁判官に選任されている期間に、国家の安全を脅かすような言動があれば、指定裁判官の資格を中止させる。

裁判法院、区域裁判所、高等裁判所及び終審裁判所において、各々裁判所の指定裁判官が、国家安全を脅かす犯罪案件に対する刑事訴訟の手続きを行わなければならない。

第45条 本法に別段の定めがある場合を除き、裁判法院、区域裁判所、高等裁判所及び終審裁判所は、香港特別行政区のその他法律に基づき、国家の安全を脅かす犯罪案件の刑事訴訟の手続きを行わなければならない。

第46条 律政司長は、国家安全を脅かす犯罪案件に係る高等裁判所第一審法廷における刑事訴訟の手続に対して、国家機密の保護、案件の外部要素、あるいは陪審員とその家族の人身安全等の理由で、陪審団を置かずに審理できることを指示する証明書を発行できる。上記の証明書が律政司長から交付された場合、高等裁判所第一審法廷にて、陪審員を置かず、三人の裁判官から法廷を構成されなければならない。

一般に、律政司長が前款規定による証明書を発行する場合、関連訴訟に適用される香港特別行政区のいかなる法律条文における「陪審団」又は「陪審団の裁決」については、裁判官又は事実上の裁決者としての裁判官の機能と理解するべきである。

第47条 香港特別行政区の裁判所は、案件を審理する際に、ある関連行為が国家安全に関連するか否か、又は証拠資料が国家機密に関連するか否かが問題となった場合、行政長官から当該問題に係る証明書を取得しなければならない。また、上記の証明書は裁判所に対して拘束力を持つ。

第五章 在香港特別行政区中央人民政府国家安全維持機構

第48条 中央人民政府は、香港特別行政区にて国家安全維持安全公署を設置する。中央人民政府の在香港特別行政区国家安全維持公署は、法律に基づいて国家安全の維持職責を履行し、関連権限を行使する。

在香港特別行政区国家安全維持公署の人員は、中央人民政府が国家安全維持のために、関連機関が共同で派遣する。

第49条 在香港特別行政区国家安全維持公署の職責は、次の通りである。

(一)  香港特別行政区における国家安全維持の状況を分析し判断し、国家安全維持に係る重大な戦略や重要な政策について意見し、提言する。

(二)  香港特別行政区国家安全を維持する職責の履行を監督し、指導し、協力し、支援する。

(三)  国家安全情報の収集及び分析を行う。

(四)  国家安全を脅かす犯罪案件を法律に基づいて処理する。

第50条 在香港特別行政区国家安全維持公署の人員は、法律に基づいて厳格に職責を履行しなければならず、法律に基づいて監督を受け、いかなる個人や組織の合法的な権益を侵害してはならない。

在香港特別行政区国家安全維持公署の人員は、全国レベルの法律を遵守するほか、香港特別行政区の法律を遵守する必要がある。

在香港特別行政区国家安全維持公署は、法律に基づき国家監察機関の監督を受ける。

第51条 在香港特別行政区国家安全維持公署の経費は、中央財政が保障する。

第52条 在香港特別行政区国家安全維持公署は、在香港特別行政区中央人民政府連絡事務室、在香港特別行政区外交部特派員公署、及び在香港中国人民解放軍駐在部隊との業務連絡及び業務協力を強化しなければならない。

第53条 在香港特別行政区国家安全維持公署は、香港特別行政区国家安全維持委員会と協力体制を構築し、香港特別行政区の国家安全維持の業務を監督し指導しなければならない。

在香港特別行政区国家安全維持公署の業務部門は、香港特別行政区の国家安全維持に係る関連機構と協力体制を構築し、情報の共有と業務の連携を強化しなければならない。

第54条 在香港特別行政区国家安全維持公署、在香港特別行政区外交部特派員公署は、香港特別行政区政府と一緒に、外国及び国際組織の香港特別行政区に存在する機構、香港特別行政区における外国及び国外の非政府組織、報道機構の管理及びサービスを強化するために必要な措置を講じる。

第55条 次のいずれかに該当する場合、香港特別行政区政府又は在香港特別行政区国家安全維持公署が提起し、中央人民政府の承認を得た後、在香港特別行政区国家安全維持公署により本法に規定された国家安全を脅かす犯罪案件の管轄権を行使する。

(一)  案件が外国又は国外勢力の介入を伴う複雑な状況に係っており、香港特別行政区の管轄権の行使が困難な場合。

(二)  香港特別行政区政府が本法を効果的に執行できない重大な事情がある場合。

(三)  国家の安全に対する重大かつ現実的な脅威がある場合。

第56条 本法第55条に規定する国家安全を脅かす犯罪案件に係る管轄権に基づき、在香港特別行政区国家安全維持公署は、立案調査を担当し、最高人民検察院は関連検察機関を指定し検察権を行使し、最高人民裁判所は関連裁判所を指定して裁判権を行使する。

第57条 本法第55条の規定に規定される管轄案件の立件調査、審査起訴、裁判及び処罰の執行等の訴訟手続につき、『中華人民共和国刑事訴訟法』等関連の法律規定が適用される。

本法第55条の規定により案件を管轄する場合、本法第56条に規定される法律執行及び司法機関は、法律に基づき関連権力を行使し、強制措置、捜査措置及び司法裁判を執ることを決定するために、発行する法律文書は、香港特別行政区で法律効力を有する。法律に基づき在香港特別行政区国家安全維持公署が執る措置を、関連機構、組織、個人は遵守しなければならない。

第58条 本法第55条の規定により案件を管轄する場合、犯罪容疑者は、在香港特別行政区国家安全維持公署に最初に尋問され、又は強制措置を執られた日から、弁護士に委託し弁護人とする権利を有する。弁護士は、法律に基づき犯罪容疑者、又は被告人に法律支援を提供することができる。

犯罪容疑者、被告人は、合法的に逮捕された後、速やかに司法機関による公正な裁判を受ける権利を有する。

第59条 本法第55条の規定により案件が管轄される場合、本法に規定される国家安全を脅かす犯罪案件の状況を知っているいかなる者も、事実に沿って証言する義務がある。

第60条 本法に基づく在香港特別行政区国家安全維持公署及びその職員の職務実行上の行為は、香港特別行政区の管轄を受けない。

在香港特別行政区国家安全維持公署が職務実行のために発行した証明書や証明書類を所持している人員、車両等は、職務執行時、香港特別行政区の法律執行者による検査、捜索、押収を受けない。

在香港特別行政区国家安全維持公署及びその人員は、香港特別行政区の法律に定められたその他の権利及び免責を享受する。

第61条 在香港特別行政区国家安全維持公署が本法の規定に基づいてその職責を履行するにあたり、香港特別行政区政府の関連部門は必要な便宜を図り、協力を行い、その職務の執行を妨げる行為に対しては、阻止するとともに責任を追及する。

第六章 附則

第62条 香港特別行政区の現地法律規定が本法と一致しない場合は、本法の規定が適用される。

第63条 本法に規定される国家安全を脅かす犯罪案件を処理する関連の法律執行、司法機関及びその人員、若しくはその他の国家安全を脅かす案件を処理する香港特別行政区の法律執行、司法機関及びその人員は、案件を処理する過程で知り得た国家機密、商業秘密、及び個人のプライバシー情報の秘密を守らなければならない。

担当弁護人又は訴訟代理人の弁護士は、業務上で知り得た国家機密、商業秘密、個人のプライバシー情報の秘密を守らなければならない。

案件処理に協力する関連の機構、組織及び個人は、案件の関連状況を守秘しなければならない。

第64条 本法を香港特別行政区に適用する場合、本法に規定する「有期懲役」、「無期懲役」、「財産の没収」及び「罰金」は各々「監禁」、「終身監禁」、「犯罪所得の没収」及び「罰金」を意味し、「禁錮」は香港特別行政区の関連法律に規定する「懲役」、「労役センターへの入所」又は「教導所への入所」を参照適用し、「管制」は香港特別行政区の関連法律に規定する「社会奉仕命令」又は「感化院への入所」を参照適用し、「免許又は営業許可証の取り消し」とは、香港特別行政区の関連法律に規定する「登録若しくは登録免除の取り消し、又は免許の取り消し」を意味する。

第65条 本法の解釈権は、全国人民代表大会常務委員会に帰属する。

第66条 本法は、公布日から施行する。

(中国語原文)中华人民共和国香港特别行政区维护国家安全法